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  1. 熊本県議会 1990-06-01
    06月15日-02号


    取得元: 熊本県議会公式サイト
    最終取得日: 2023-05-26
    平成 2年 6月 定例会┌──────────────────┐│  第 二 号(六月十五日)    │└──────────────────┘ 平 成 二 年  熊本県議会六月定例会会議録    第二号──────────────────────────平成二年六月十五日(金曜日)    ───────────────────   議事日程 第二号  平成二年六月十五日(金曜日)午前十時開議 第一 代表質問(議案に対する質疑並びに県の一般事務について    ───────────────────本日の会議に付した事件 日程第一 代表質問(議案に対する質疑並びに県の一般事務について      ───────○───────出席議員(五十四名)                 大仁田 貞 夫 君                 高 野 誠 一 君                 水 野 秀 昭 君                 吉 本 賢 児 君                 村 上 寅 美 君                 草 村   照 君                 鬼 海 洋 一 君                 本 田 良 一 君                 松 村   昭 君                 久 保 立 明 君                 福 村 三 男 君                 前 田 貞 治 君                 池 田 貞 俊 君                 小早川 宗一郎 君                 岩 下 榮 一 君                 前 畑 淳 治 君                 野 田 将 晴 君                 荒 木 詔 之 君                 中 島 絹 子 君                 中 島 隆 利 君                 島 田 幸 弘 君                 島 津 勇 典 君                 大 西 靖 一 君                 倉 重   剛 君                 山 本   靖 君                 渡 辺 知 博 君                 西 岡 勝 成 君                 深 水 吉 彦 君                 阿曽田   清 君                 三 角 保 之 君                 永 田 健 三 君                 堀 内 常 人 君                 山 本 秀 久 君                 八 浪 知 行 君                 鏡   昭 二 君                 髙 田 昭二郎 君                 古 閑 一 夫 君                 大 森   豊 君                 馬 場 三 則 君                 古 閑 三 博 君                 平 川 和 人 君                 北 里 達之助 君                 広 瀬 博 美 君                 柴 田 徳 義 君                 金 子 康 男 君                 米 原 賢 士 君                 小 材   学 君                 八 木 繁 尚 君                 幸 山 繁 信 君                 池 田 定 行 君                 小 谷 久爾夫 君                 水 田 伸 三 君                 今 井   洸 君                 酒 井 善 為 君欠席議員(なし)    ───────────────────説明のため出席した者          知事     細 川 護 熙 君          副知事    山 内   新 君          出納長    伴   正 善 君          総務部長   板 倉 敏 和 君          企画開発部長 飯 原 一 樹 君          福祉生活部長 東 瀬 偉 一 君          衛生部長   星 子   亘 君          環境公害部長 佐 藤 幸 一 君          商工観光労働          部次長    月 足 敬 治 君          農政部長   木 村 剛 勝 君          林務水産部長 木 村 幸次郎 君          土木部長   杉 浦 健 次 君          公営企業          管理者    小 澤   豪 君          教育委員会          委員長    安 永 蕗 子 君          教育長    松 村 敏 人 君          警察本部長  村 井   温 君          人事委員会          事務局長   中 島 伸 之 君          監査委員   野 口   浩 君   ────────────────────事務局職員出席者          事務局長   松 見 廣 海          事務局次長  中 島 太 白          議事課長   清 塘 英 之          議事課長補佐 宮 﨑 博 次          主事     小 池 二 郎      ───────○───────  午前十時五分開議 ○議長(北里達之助君) これより本日の会議を開きます。      ───────○─────── △日程第一 代表質問 ○議長(北里達之助君) 日程に従いまして、日程第一、代表質問を行います。 発言の通告があっておりますので、これより順次質問を許します。 なお、質問時間は一人百分以内の質疑応答でありますので、さよう御承知願います。 自由民主党代表深水吉彦君。  〔深水吉彦君登壇〕(拍手) ◆(深水吉彦君) おはようございます。自由民主党の深水でございます。六月議会冒頭の代表質問の機会を与えていただき、深く感謝を申し上げる次第でございます。 質問に入ります前に、まず、先日のペルー大統領選挙において、日系二世、アルベルト・フジモリ氏が当選確実になられたという報道に接し、県民ひとしく喜び合い、最近の明るい話題となっております。大統領就任式には熊本県からも代表を送りたいものであります。御両親が熊本県・河内町の出身とのこと。心からお祝いを申し上げ、御活躍を願ってやみません。 また、二十九日は礼宮と紀子さんとの御結婚もとり行われるとのこと。国民として、謹んで慶賀に存じ、心から祝福を送りたいと思います。 最初に、現在新聞等で報道されております福祉施設や畜産農業協同組合をめぐる一連の不祥事についてお尋ねしたいと思います。 今回この質問を最初に取り上げたのは、行政にとって基本となるものは何かということが今回の事件では最も問われていると思うからであります。 そこで、まず福祉施設に関してでありますが、本来福祉施設は、お年寄りや障害者などいわゆる社会的弱者と言われる方々のよりどころとして、県民の多くが期待し、信頼を寄せているところであります。 今回の不祥事の内容を見てみますと、入居者の大切な障害年金等を相談介助員が自分の借金の返済のために着服したり、入居者の貯金を施設長が施設の運営資金に充てるために借り入れるなど、福祉に携わる職員としてのモラルが欠如しているとしか考えられません。どういった方々を対象とした施設であるのか、どういった仕事に携わっているのかということについて、福祉関係者としての自覚を著しく欠いた行為であります。中でも、りんどう荘やくすのき園は、そのいずれもが県の施設で、県社会福祉事業団にその運営を委託しているものであり、さらに、障害者の皆さんの社会的自立を目指したその運営システムは、心身障害者福祉の拠点、希望の里としてこれまで全国に誇ってきただけに今回の不祥事は大変残念であります。 これら一連の行為は、障害者の皆さんはもとより県民の期待と信頼を裏切るものであり、それだけにこれまでの県の指導監督のあり方が厳しく問われているのであります。 次に、阿蘇畜産農業協同組合に関してでありますが、来年四月の牛肉自由化を目前に控え、国や県においては肉用子牛価格安定対策を中心に総合的な自由化対策がなされ、さらに本県としても、全国のトップレベルにある受精卵移植技術を利用した優秀な牛の生産や周年放牧による低コスト生産など、畜産農家の経営体質の強化に取り組んでまいられております。 本県における畜産は、平成元年度における農業粗生産額の四分の一の一千億を突破し、名実ともに本県農業の基幹作目となっております。これも農家の方々の日ごろの努力はもちろん、県を初め市町村、農業関係者など一体となって取り組まれた成果であろうと思います。それだけに今回の不祥事はまことに残念であります。新聞等の報道によれば、阿蘇畜産農業協同組合において、国や県からの補助金等が適正に執行されておらず、畜産行政に対する農家の皆さんの大変な不信感を招いております。 そもそも畜産振興のための施策は、農家経営の安定を図ることが目的でありますが、農家と組合の信頼関係があって初めてその成果が期待されるものであります。かかる観点から、阿蘇畜協は、熊本、大分にまたがる広域農協であり、監督権が国、農政局にあるとはいえ、補助事業を進めるに当たり、農民の立場に立って厳正に執行すべきであったし、また、県も同様な立場からフォローをしっかり行っておれば、今回の事態は防げたかもしれません。 今回の福祉や畜産の問題について考えてみるに、福祉とは一体何なのか、福祉施設はだれのために、何のためにあるのか、また、畜産関係の補助金等はどういう目的で、だれのために補助されたものなのかということであります。 機会あるごとに、行政ニーズを的確に把握し、県民のニーズにこたえていくということが言われますが、県民あっての行政という観点から、今回の一連の不祥事について、事実関係を踏まえ今後の対応について、知事のお考えをお尋ねいたします。  〔知事細川護熙君登壇〕 ◎知事(細川護熙君) 福祉施設や畜産農業協同組合をめぐる一連の不祥事についてのお尋ねでございますが、このいずれもが公共的な使命を帯びた公共的団体において発生した事件でありますだけに、まことに残念でありますし、また、不祥事を未然に防止できなかったことにつきましては大変申しわけなく思っております。 福祉施設についてでございますが、不祥事のあった施設については直ちに特別監査を実施し、また事件の再発を防止するため、各施設に対しても預かり金の実態調査を行い、また内部事務処理、監査体制の強化などに努めるよう指導してきたところでございます。また、施設に対する指導と監査体制の充実を図るため、去る六月十一日付で専任二人を含む十一人の監査プロジェクト班を発足させたところでございます。一方、熊本県社会福祉事業団においては、組織体制のあり方などについて、問題点を洗い出し、検討がなされております。なお、事業団の活性化のため、県との人事交流を行うこととし、本日十五日付で、りんどう荘、くすのき園の園長として県の職員を一名派遣したところでございます。 今後、施設職員の資質の向上を図るため、研修などの充実に努め、福祉行政に対する県民の信頼回復が図られるよう努力してまいる所存でございます。 それから、阿蘇畜産農業協同組合でございますが、これまで県は、家畜導入事業資金供給事業などのように、事業主体として農業団体が補助事業を行うものにつきましては書類上の審査をもって確認してきたところでございますが、今後は、補助事業の適正な執行を期するため、これまでの書類審査だけでなく、必要に応じ現地調査を行うなど、県として可能な審査の適正強化に努めてまいりたいと思っております。 なお、本組合は、御指摘のように、その活動区域が熊本、大分両県にわたりますことから、農協法では監督行政庁は国ということになっておりまして、昨年十二月とことしの二月に農協検査が実施されております。今後とも、国と緊密に連携をとりまして、財務内容の明確化と一日も早く業務が正常化されるよう指導してまいりたいと考えております。  〔深水吉彦君登壇〕 ◆(深水吉彦君) 福祉は老人や弱者対策であり、阿蘇といえば熊本をすぐ思い出します。県のイメージダウンになり、自由化の波が農業へも押し寄せる今日、まことに残念であります。何のため、何をやるのかという心構えを再確認し、再発防止に努力をお願いいたします。 次に、地域振興のあり方についてお尋ねしたいと思います。 まず、各圏域におけるプロジェクトの着実な推進についてでございますが、知事は、就任以来、県政の目標として「熊本・明日へのシナリオ」を掲げ、地域の具体的な発展方向を「県土デザイン編」により示し、さらに「一〇〇のターゲット」により、どれもこれもという総花的ではなく、重点的な取り組みを図りながら県政浮揚に尽力されてこられました。また、国内的には、四全総以来機会あるごとに、東京一極集中を排し、多極分散型国土の形成には、国から地方への思い切った権限移譲、財源再配分、いわゆる地方分権が不可欠であることを主張され、全国から多くの賛同を得るなど、地方を代表するオピニオンリーダーとして活躍されておられます。知事の強烈な個性と行動力や全国のモデルとなるようなさまざまな取り組みで、熊本は全国でも大変注目に値する県であるという評価が定着した感があり、県議会の一員として、また県民の一人として大いなる敬意を表する次第でありますが、今後とも県政推進に積極的なリーダーシップを図られんことを希望しながら質問いたします。 国において多極分散型国土の形成が一つの命題であるごとく、県政全体の浮揚のみならず県土の均衡ある発展というものが県政の重要課題であることは、知事もかねがね主張されるとおりであります。しかし、現実にこのことが大変難しい課題であることは、我が国における一極集中になかなか歯どめがかからないという現実から見れば容易に推測されることでございます。ただ、このように困難な課題であればこそ、国においてなかなか実行が進まない問題であればあるほど、地方にあって国政のあるべき姿を見据えておられる細川知事に正面から取り組んでほしいテーマであると考えます。 平成三年二月をめどに、飽託四町と熊本市との合併が具体化して動き出しておりますが、聞くところによると、もしそれが実現すれば、熊本市の人口は、昭和六十年の国調ベースで、五十五万五千人余から四万五千六百四十八人ふえて六十万一千人余となり、全国の都市の中で十六位から十五位に位置することになり、面積的にも全国三十八位から二十七位に躍進することになるとのことであります。これは、九州における福岡一極集中に対抗し、熊本都市圏の都市機能を県都にふさわしいものとして整備していくという観点からは一つの望ましい方向であると思いますが、反面、熊本市への一極集中をさらに進めることになりはしないかという懸念もあるわけでございまして、そういうことからも県土の均衡ある発展に向けた着実な取り組みを大いに期待しているところであります。 県土デザイン編は、そういう意味で県土の均衡ある発展を目指すグランドデザインであるわけですが、そこでは県内を七つの圏域に分けて、各圏域の地域特性を踏まえた将来の発展方向とそれを具体化するための主要プロジェクトを示しておられ、それに基づいて各圏域ごとに的を絞ったプロジェクトの推進を図られているところでございます。例えば熊本中央圏においては、熊本都市圏を中心に、本県における産業、経済、教育、文化の牽引的な役割を担う地域として、テクノポリス計画など国際的拠点としての地域整備が図られております。有明・鹿本圏については九州アジアランド構想、阿蘇圏においては国際的高原リゾート基地づくり、八代圏では県南の拠点都市としての八代市の都市機能の整備、水俣・芦北圏では水俣湾公害防止事業埋立地の有効活用を核とした地域づくり、人吉・球磨圏では九州縦貫自動車道の開通を前提とした拠点性の向上、天草圏では海洋リゾート基地づくりに取り組んでおられるわけでございます。これらは、各圏域における地域振興策の柱として地域としても大いに期待しているものであり、ぜひとも着実な推進を望むところでありますが、幾つか感ずるところを述べさせていただきます。 一つは、これらのプロジェクトを推進するには、やはり交通基盤の整備が重要ではないかと思うのであります。県土デザイン編においても、交通ネットワークの整備は大きな柱に位置づけられ、熊本都市圏と九州各県主要都市間を結ぶ百五十分構想、熊本空港及び熊本都市圏熊本県内主要都市を結ぶ九十分構想を推進されておられますが、九州アジアランド構想にしろリゾート構想にしろ、集客性の高い拠点施設づくりであり、当プロジェクトにおける交通アクセスの整備は特に重要な要素になると思われます。九州新幹線については、旅客輸送に大きな威力を発揮するものでありますが、一日も早い本格着工を望むところであります。九州縦貫自動車道は、昨年十二月に念願の八代─人吉間が開通しましたが、人吉─えびの間の整備促進及び全線四車線化を図るべきであると思います。南九州西回り自動車道につきましては、県南地域、特に水俣・芦北地域の振興の柱として積極的な整備促進を図られるよう希望するものであります。島原、天草、長島を結ぶ三県架橋構想については、さきに決定されました国の九州地方開発促進計画に構想の検討という形ではありますが盛り込まれ、構想実現に一歩踏み出したものと理解しております。さらに八代と天草を結ぶ架橋構想も、昨年地元四十一市町村により建設促進期成会が設立されたわけでございますが、ぜひとも構想実現に向けて積極的な取り組みを行われますようお願いいたします。 二つ目には、プロジェクトの多くが集客拠点の整備ということでございますが、これは、県内外から多くの人を熊本へ招き入れることによって、県経済の浮揚に結びつけていくというものでありましょう。農林水産業の先行きも大変難しい時代であり、製造業の企業誘致もなかなか難しく、地場企業の底上げを図ることに時間を要するときに、リゾートを初めとしたサービス産業の育成を戦略的に図っていくということは、時代の流れに対応したものとして評価されるべきものと思います。しかし、本県の経済は、基本的に農林水産業に支えられるところが大であり、知事も農業を基幹とすべきと述べられていますし、また、長期的に本経済の構造的な強化を図っていく場合、やはり第二次産業、いわゆる製造業の振興を図ることが必要であると考えます。各圏域における拠点プロジェクトを推進するに当たっては、いかに地場企業の育成、地域経済の浮揚に結びつけるか、さらに地域全体の活性化に結びつけるかが重要であろうと思われます。また、開発に当たっては、外からの資本に依存するだけでなく、地元の資本との連携を図り、地域と一体となった取り組みも不可欠であろうと思われます。 そこで、まずお尋ねでありますが、地域振興の柱として各圏域で現在進めておられるプロジェクトを、どういう視点で、どのように進めていかれるつもりか、交通基盤整備の状況も含めて、知事の基本的な考え方をお聞かせ願いたいと思います。  〔知事細川護熙君登壇〕 ◎知事(細川護熙君) 御指摘がございましたように、各圏域のプロジェクトを推進する上で、交通基盤の整備は最も重要な問題でございます。 新幹線につきましては、本年度、県内の第二今泉トンネルの着工が決定し、道路につきましても、お話にございましたように、九州縦貫自動車道が人吉まで開通し、また西回り自動車道につきましても、八代─芦北間が昨年八月の基本計画決定に続きまして環境影響評価の手続が始められることになったことは御承知のとおりでございます。 このように、県土の背骨に当たる部分は一応の前進を見ておりますが、これらを含めまして、交通基盤の整備をなお一層推進するため、現在国において策定されている公共投資十カ年計画などにおきまして予算が重点的に配分されるように国などにさらに強く働きかけてまいりたいと思っております。 それから、各圏域のプロジェクトを進めるに当たっての基本的な考え方についてのお尋ねでございますが、かねていろいろな機会に申し上げておりますように、活力と個性を持ち、社会的、経済的に調和のとれた県土としての魅力ある田園文化圏の創造を目指しておりますわけで、それには、それぞれの地域がいかに他の地域にない魅力を持ち得るかということが一番肝要なことだと思っております。言いかえれば、地域の特性を生かした拠点性、集客性を高めることのできるプロジェクトを各圏域ごとに推進をし、製造業の振興も含めた本県経済の構造的な強化を図ろうということでございます。 なお、プロジェクト推進の大きな起爆剤として県外資本の活用も積極的に行っておりますが、企業誘致と地場産業の育成は常に車の両輪と考えておりますわけで、例えば阿蘇、天草のリゾート構想の推進に当たりましては、地域の農協や漁協などがリゾート産業にも積極的に参画あるいは連携するための方策を考えるなど、地場産業の振興に意を用いているところでございます。 今後とも、各圏域のプロジェクトを着実に推進をすることによりまして、地域経済の浮揚と活性化を図ってまいりたいと思っております。  〔深水吉彦君登壇〕 ◆(深水吉彦君) 交通基盤の整備は活性化の原動力であり、熊本県の浮揚につながる大きな要因でもあります。均衡ある発展こそ県土のレベルアップをもたらすものでございます。県民ひとしく我が郷土の発展を願っておりますし、最重要課題としての取り組みをお願いいたします。特に西回りにつきましては一日も早い貫通への御努力をお願いいたします。 新水俣・芦北地域振興計画の推進についてお尋ねをいたします。 昭和五十三年六月二十日の水俣病対策の閣議了解事項の一環として策定されました第一期の水俣・芦北地域振興計画に引き続き、六十一年度から平成七年度までの十カ年を計画期間として新たに新水俣・芦北地域振興計画がスタートしているわけでございますが、計画の実現に御努力、御理解をいただいている議員各位並びに県執行部、あるいは県民の皆様に対しまして心から感謝を申し上げます。 ところで、新水俣・芦北地域振興計画は、計画期間を前期、後期それぞれ五カ年に区分して策定されており、前期の五カ年間は、第一期七カ年計画と同様に、公害防止対策事業等の環境復元に重点を置いた計画となっております。この前期五カ年計画の中で、六十一年度から平成元年度までの四カ年間の実績を見ますと、この三月に完成を見ました水俣湾公害防止事業を初めとして、農林道等の産業基盤の整備や生活環境、教育・文化施設の整備など、各般にわたり事業が実施された結果、順調に計画が推進されたものとして評価をしているところであります。また、地元においても、水俣病による地域の暗いイメージを払拭し、明るい活力のある地域社会の再生浮揚を目標に、水俣市の花と緑の都市づくりや田浦町の御立岬公園整備、芦北町のマリンパーク整備、津奈木町の緑と彫刻のあるまちづくり推進など、それぞれ鋭意努力されているところでございます。 しかしながら、本年度より施行されました新過疎法において、水俣市と田浦町が新たに過疎市町村に指定され、地域の全市町が過疎地域になるなど、当地域の置かれている社会経済的環境は依然として厳しいものがあります。水俣・芦北地域の再生浮揚のためには、基幹的交通ネットワークの整備を初め国及び県の強力な支援のもと、従来にも増して積極的な施策が必要であると考えます。 そこで、現在県におかれては、来年度から始まる新水俣・芦北地域振興計画の後期五カ年計画を、水俣市及び芦北郡三町と協議の上策定し、関係省庁と協議中とのことでありますが、今回策定された後期計画の基本的方向とその推進策について、知事にお尋ねをいたします。 次に、新水俣・芦北地域振興計画主要プロジェクトである水俣湾埋立地及び周辺地域開発整備具体化構想についてお尋ねします。 地球温暖化やオゾン層の破壊など、地球規模での環境問題が世界的にクローズアップされてきている今日、構想の推進に当たっては、産業公害の原点としての水俣が今後どのように地球環境保全に貢献できるかという視点が重要ではないかと思います。このため、具体化構想の実現を図る上においては、水俣地域のみならず、国民、人類にとって貴重な体験である水俣病の教訓を後世に生かした取り組みが必要であると考えておりますが、先日、環境創造MINAMATA準備委員会の設立会議が開催され、環境創造へ向けてのアクションプログラムが提案されたところでありますが、今後さらに実行委員会の設立など構想の推進体制の確立や各施設の整備計画の作成などの必要があるものと考えます。 報道によりますと、本年度から平成四年度までの間に、例えば水の再生や緑の再生などの身近な行動プログラムから、地域環境シンポジウムや世界竹会議、あるいは宇宙船地球号ティーチ・インや環境国際会議など、水俣が環境をテーマとした地域の創造に向けた行動を始めることや地球環境に関するメッセージを発信するために、さまざまなプログラムが計画されているようでありますが、将来的には、このプログラムの実施をきっかけとして、環境創造に向けた動きが定着するとともに、当地域を起点として、日本からアジア、さらには世界へと地球的規模での環境問題に関するネットワークが形成されることを期待するものであります。 また、施設整備の基本方向については、当面環境センターや水俣病資料館、あるいは竹林園の一部などが整備されるようでありますが、将来的には、環境復元モデル都市を目指す水俣の拠点地区として、花や緑を基調としながら、景観デザインや色などにも工夫した施設の整備が必要ではないかと思います。 なお、水俣地区の再生を図っていく上においては、埋立地及び周辺地域の整備を核として、生活環境の整備や環境と共生する産業の振興のほか、湯の児温泉や湯の鶴温泉の活性化あるいは中心市街地の活性化など、全般的な取り組みを行っていく必要があるのではないかと考えます。 さらに、具体化構想は、県の重要プロジェクトとして位置づけられており、広域的視点からの推進が重要でありますが、例えば周辺地域と連携した集客拠点としての整備を図るなど、水俣・芦北地域全体の活性化につながるような取り組みが必要ではないかと存じます。 このようなことから、県としては、実行委員会の設立など構想の推進体制についてどのように考えておられるのか、また、アクションプログラムの実施や具体的な施設整備の方針などどのように考えておられるのか、知事のお考えをお尋ねいたします。  〔知事細川護熙君登壇〕 ◎知事(細川護熙君) 新水俣・芦北地域振興計画の来年度から始まる後期計画についてのお尋ねでございましたが、御指摘のように、本年三月をもちまして公害防止事業が完成を見ましたので、後期におきましては、本計画の目標である新しい地域イメージの確立と活力ある地域社会の再生を目指して計画を策定をしたところでございます。 新しい地域イメージの確立については、既に公表している水俣湾埋立地及び周辺地域開発整備具体化構想を本計画の主要プロジェクトとして全力を挙げて取り組むことにより、また、活力ある地域社会の再生には、産業の振興、社会環境の整備、交通ネットワークの整備などを促進することとし、来年度からの後期五カ年で総額七百三十七億円の事業を計画いたしております。特に産業の振興につきましては、地域の特性を生かした農林水産業の振興、地域住民のコミュニケーションエリアとしての魅力ある商店街づくりの推進、あるいは海岸線の保護、養浜事業、あるいは温泉地を生かした健康志向の集客力整備などを積極的に推進をしてまいりたいと考えているところでございます。また、教育・文化施設、下水道など社会環境の整備につきましてもさらに積極的に取り組んでまいることにいたしております。 なお、先ほども申し上げましたとおり、交通ネットワークの整備は当地域の振興を図る上から不可欠なものでございますし、とりわけ、西回り自動車道の建設促進並びに新幹線鹿児島ルートの建設は県政の重要課題でございますので、今後とも県議会の御支援を得ながら、地元と一体となってその推進に努力を傾けてまいりたいと思っております。 それから、埋立地を中心とした地域の振興の問題についてのお尋ねでございましたが、今世界各地で地球環境の危機が叫ばれている中で、私は、公害の原点である水俣から一度破壊された環境を復元することがいかに大きなエネルギーを必要とする困難な事業であるかということ、また、環境復元への努力の中で、人間と環境との調和を求めていこうとする水俣の姿を世界に訴えていくということが大変重要であると考えているところでございます。さらにそのことが、今お話がございましたような地球的規模での環境問題に関するネットワークにも結びつくものと考えております。 お尋ねの構想の推進体制につきましては、県におきましては、かねてから庁内に水俣振興推進本部を設置しておりますが、先日、地元の方々はもとより、広く県民各界各層の代表を含めた環境創造MINAMATA準備委員会を設置したところでございまして、さらに、八月ごろには実行委員会として推進体制の拡充を図りたいと考えております。また、地元水俣市におきましても、有識者から成る推進対策委員会が去る三月にスタートしたところでございます。 それから、アクションプログラムの実施の方針につきましては、何よりも地元の市民が一つ一つのプログラムに積極的に参加をしていただくということが肝要であると考えておりまして、その意味で、水俣市が中心となって八月十一日に計画されている市民一万人コンサートは、多くの市民の参加が期待されるもので、県としてもできるだけの御支援をしていきたいと考えております。 また、施設整備面におきましては、多くの人々を引きつける魅力ある施設の整備あるいは住民の生活環境の整備に努めますとともに、環境保全と両立し得る産業の振興を図っていかなければならないと思っております。 水俣・芦北地域の振興は、県政の重要課題であり、水俣病の教訓を生かすとともに、広域的視点も踏まえながら構想の推進を図りまして、周辺町を含め、環境復元のモデル都市として整備を今後とも進めてまいりたいと思っております。  〔深水吉彦君登壇〕 ◆(深水吉彦君) 水俣・芦北地域の浮揚は、私ども地元民の切なる願いでもあります。なお一層のお力添えをよろしくお願いをいたします。 埋立地開発構想については、我が郷土の文豪・徳富蘇峰は、百年前、水俣に婦人会の創設を説いた人でもありますが、郷土を次のようにうたっております。「善き里と讃えられたる水俣は 今も然るか善き里として」と望郷の念を詠んでいますが、その水俣も世界的な公害の町となり、やっと公害を克服した町を目指しております。 埋立地構想については、水俣は今「環境復元から環境創造へ」の発想で再出発しようとしています。国際イベント構想案にすばらしい一文があります。御紹介したいと思います。  いま、世界各地で環境の危機が叫ばれている。  いま、我々にできることは何か。  いま、しなければならないことは何か。  いま、すぐに始めなければ手遅れになる。  いま、大切なことは環境にどう関わるかである。水俣は、わずかずつもとの姿を取り戻しつつある。  この教訓を後世に伝えるために  手をとりあって、新しい環境を創造しよう。 一文を御紹介いたしましたが、県民の努力が実りあることを願っております。 次に、農業振興についてお尋ねいたします。 今日の農業は、米を初めほとんどの農産物において、生産調整や価格低迷が続くとともに、牛肉・オレンジ輸入自由化が決定されるなど、かつてない大きな転換期にあります。我が党といたしましても、これまで本県の基幹産業としての農業を最も重視し、生産者、農業団体と緊密な連携のもとにその振興に取り組んでまいっているところであります。このような努力の積み重ねの結果、次第にその成果もあらわれてきつつあります。例えば米の新品種・ヒノヒカリ、温州ミカン・金峯、中晩かん・清見、河内晩かんの木なり完熟の高い市場評価、あるいは肉用牛の品質向上につながる受精卵移植技術の普及など、明るい話題も聞かれるようになりましたし、元年の農業粗生産額は推計で初めて四千億を上回るなど伸展を見ております。これもひとえに県を初め生産者、農業団体等関係者の大変な努力によるものであり、深く敬意を表すると同時に、今後一層の精進を期待したいと思います。 しかし一方では、ガット・ウルグアイ・ラウンド農業交渉において、日本に対する米自由化への圧力が報道されておりますが、政府が国会決議を十二分に尊重し、絶対に外国の圧力に屈しないよう、県は国に対し積極的な働きかけを行われるよう強く要望しておきます。 いずれにいたしましても、牛肉・オレンジの輸入自由化を目前に控え、一段と厳しさを増す農業情勢の中で、今後取り組むべき課題は山積しているわけでありますが、我が県の農政推進上重要なうまい米づくりについては、三月定例議会において、我が党の代表質問に対し、知事からその取り組みについて基本的な考えが示されておりますので、その実効ある推進をお願いいたしまして、本日は、私が県南の果樹地帯出身であります関係から、現在最大の関心事であります果樹振興対策と農業の体質強化を図る上で基本となる新技術開発の二点に絞って質問を申し上げます。 まず、果樹振興対策についてであります。 オレンジ生果は、来年四月一日から自由化されることになり、国内かんきつ産業もいよいよ本格的な国際競争の時代へ突入しようとしています。オレンジ自由化対策につきましては、昭和六十三年の日米農産物交渉の合意による自由化決定を受けて以来、国、県一体となった対策が講じられてきたところであります。我が党も、自由化の影響が、かんきつ産地、かんきつ生産者に極力波及しないように、政府に対し万全の措置を講じるよう強く要請し、かんきつ園地再編対策を基軸とする重点五項目の自由化対策骨子を樹立し、その実現を図ってきました。 本県におきましては、細川知事の英断をもって、独自の中晩かん園地再編対策を講じられる一方、県、市町村、農業団体一体となって総合的な対策を講じられたことは、生産者に大きな勇気を与えたところであります。私ども生産者も、国際化に向かって経営体質の強化を図るため、必死の思いで、永年愛し育てたミカンの木を伐採し、金峯や清見など優良品種への更新を進める一方、園内作業道整備など基盤整備による省力化、さらに品質向上のためのハウス栽培、マルチ栽培など、思い切った栽培改善と経営転換を図っているところであります。 このような取り組みの中で、県単独事業の傾斜地型高生産性果樹園整備事業やかんきつ園転換等落葉果樹団地育成事業等の自由化対策については、まことに時宜を得たものであり、県下ミカン産地の全域において生産者の積極的な取り組みが行われておりますので、一層の拡充強化を要望いたします。 平成元年産かんきつ類の販売状況は、温州ミカンを初め中晩かん類に至るまで好調に推移しており、特に長期低迷に沈んでいたアマナツミカンも当初予想を上回り、京浜市場における五月中旬までの単価は、前年比四七%高の二百二十円台と高値をつけており、生産者に久しぶりに笑顔が戻ってきた感じがいたします。本年の高値は、言うまでもなく、減反による国内かんきつ類の需給均衡によるところが大きいわけでありますが、そのほかに、アメリカ・フロリダ州を中心に被害をもたらしたフロリダ寒波の影響によるグレープフルーツ等輸入かんきつ類の入荷減など、他の要因によることが大きく左右していることも見逃せない事実であります。このような状況を考えますと、この高値は本年特有の現象かどうか、今後の見通しについて楽観はできず、アマナツミカンについては依然として厳しい状況にあると言えましょう。 このような情勢に立ち、今後とも市場性の高い高級かんきつ類への転換を一層加速させていく必要があります。しかし、果樹は、申し上げるまでもなく永年作物であり、昔から「桃栗三年、柿八年」とよく言われておりますが、結果するまでに三ないし四年、成木に達するまでには七、八年という長い育成期間が必要であります。周到な準備と先見性を持った計画的な振興を図らなければ、スムーズな経営転換ができないばかりでなく、時代対応にも乗りおくれてしまいます。国際競争に打ちかっていくには、長期計画をもとに産地体制の整備を図っていかなければなりません。 県におきましては、このような視点に立ち、今後どのような果樹振興計画のもとに振興を図っていかれるのか、知事にお尋ねをいたします。 次に、農業技術開発についてであります。 先ほどお尋ねしました果樹振興を初め農業の振興を図っていく上でも、そのもととなるものは何といっても農業技術であります。牛肉・オレンジの自由化等、国内外の競争が一段と激化する中で、産地間、国際間競争に打ちかつためには、高品質化、低コスト化を推進することが不可欠であり、また、鮮度・高品質、健康・安全志向といった多様化する消費者ニーズへの的確な対応を図る必要があります。そのためには、先を見通した革新技術の開発、普及をいかに迅速に行っていくかが最も重要な課題であり、そういった意味では、農業技術開発は本県農業の将来を切り開くかぎと言っても過言ではありません。 このような観点から、知事は、昨年四月に、これまで分散独立していた十三カ所の農業試験研究機関を組織的に一元化し、研究の高度化、効率化、迅速化を図り、総合力を発揮することで産地間競争を勝ち抜こうという意気込みのもと農業研究センターを発足されたわけでありますが、このことは、今日の本県農業の置かれている現況を見るとき、すばらしい発想、着目であります。成果を期待できると思います。先般、農政委員会で視察をいたしましたが、広々とした牧草地やクヌギ林に囲まれた建物は、周囲の景観にマッチして大変すばらしく、施設整備の面でも全国でトップレベルにあるとお聞きをいたしております。 このようなすばらしい研究環境が整えられ、県民の期待も大きいものがありますが、問題は中身であります。仏つくって魂入れずということにならないためにも、今までにも増して、農業者の声を十分反映した研究課題の設定を行っていただき、将来展望に立った、あるいは今日的な課題に対応した研究開発に取り組んでいただく必要があると思います。また、農業者の方々に現在の研究開発の状況を知っていただくため、隣接して整備される農業公園、カントリーパークと連携させながら、気軽に行けるような配慮をお願いしたいと思います。 それから、研究の迅速化、レベルアップあるいは研究員の資質向上を図るため、米の育種あるいは養蚕の分野に外部から特別研究員としてその道の第一人者を招聘されるなど研究体制の整備も進めておられますが、それと同時に、今後は、農業技術の活性化あるいは新たな展望を開く意味からも、ほかの分野との技術交流を図っていくことが必要であろうかと思います。 技術開発は、農業分野に限らず日進月歩の勢いで進展をしており、特にエレクトロニクスなどの工業分野においては著しいものがあり、これらの技術を積極的に農業分野に導入することが本県農業の活性化を図る上で重要なことと思います。県には、工業技術センター、水産研究センター、林業研究指導所などの試験研究機関がありますが、これらとの連携を図り、例えば共同研究等を実施し、互いのノーハウを活用するのも一つの方法かと思いますが、この技術交流の問題も含め、農業技術開発について、現在どのような取り組みが行われているのか、また、中長期的にはどのような基本方向で取り組まれるのか、知事にお伺いをいたします。  〔知事細川護熙君登壇〕 ◎知事(細川護熙君) 本年の四月十四日、県果樹大会に出席をいたしましたが、ことしの大会は、数年前までとは大分さま変わりをして、生産農家の方々の明るさを取り戻した表情が大変印象的でございました。 本年のかんきつ類の価格は、お話にございましたとおり生産調整の効果もあらわれまして好調に推移しております。しかし、これで安心しているわけにはいかないわけで、今後とも、自由化対策を一層強化し、足腰の強い産地を育成してまいらなければなるまいと思っております。 また、果樹振興計画につきましては、国において、去る三月二十日、平成十二年度を目標とする果樹農業振興基本方針を公表されましたが、県としては、この国の基本方針を踏まえ、国の計画の伸びを上回る県果樹農業振興計画を策定をいたしまして、関係団体などで構成する果樹農業振興協議会においてさきに承認をいただいたところでございます。 この計画の骨子は、第一に、計画目標年度を平成十二年度とし、粗生産額は現在の五〇%増の五百億円を目指す、果樹専業農家の一戸当たりの所得目標を八百万円とする。第二には、振興対象品目は、かんきつ十品目、落葉果樹十一品目ということで、温州ミカン、アマナツミカン、ハッサク、ネーブルオレンジ、伊予カンは面積を縮小いたしまして、清見、ポンカンなどの優良中晩かんと落葉果樹については積極的に面積の拡大を図る。第三には、園内作業道などの基盤整備について、果樹全体としては要整備面積の七〇%を、オレンジ自由化で緊急な整備が要請されているかんきつ類については八〇%を目標に推進をする。第四には、流通の合理化について、氷温貯蔵施設等の高性能施設の整備を図りますとともに、積極的な販路拡大のために、ミカンなどの輸出拡大と付加価値の高い熊本型有機農業を推進をしていく、また加工については、原料果実の需給安定と新製品の開発、加工施設の高度化の推進を図ることなどを挙げているわけでございます。 本計画の実施に当たりましては、市町村や農業団体と連携をしまして、しっかりと目標管理をしながら着実な計画の達成を目指してまいりたいと思っております。 それから、農業技術開発の基本方向と取り組み状況についてのお話でございましたが、農業技術の開発は本県農業の将来を左右する重要な課題でございますので、農業研究センターの総力を挙げて組織的に計画的にその開発に努めていきたいと思っております。 まず、基本方向についてでございますが、農業者が明るい将来展望と意欲を持って取り組める活力ある農業の実現を図るため、長期的な視点から、農家の当面する問題や要望を的確に酌み取ってその解決に真っ正面から取り組みますとともに、多様化する流通、消費者志向といったものを視野に置きながら、農家の経営向上に役立つ技術の開発、普及を図ることを基本といたしております。そのためには、普及組織との連携を強化し、かつ変化の激しい農業情勢に即応するため、研究員の資質の向上を図りながら、研究やその普及の迅速化を進めてまいりたいと考えているところでございます。 現在取り組んでいる研究開発の主なものについて申し上げますと、まず米につきましては、これまでヒノヒカリなど優良品種の選定に取り組んでまいりましたが、引き続き良質米の選定試験を行いますとともに、バイオの技術を駆使して葯培養によって、良食味米の開発や多収性で加工に適したハイブリッド米の育成にも努力をしていきたいというふうに思っております。 野菜につきましては、需要が多様化しているマスクメロンの新品種の育成や小物野菜の栽培技術の開発に取り組んでいるところでございます。 また、果樹につきましては、県が開発した温州ミカン・金峯が、昨年市場で高い評価を受けましたが、現在アマナツミカンにかわる有望な新しい品種の育成に取り組んでおります。 さらに、畜産につきましては、全国でもトップレベルにある受精卵移植技術を利用して、牛の双子生産、あるいは雌雄産み分け技術や清浄豚の生産技術の開発を行っているところでございます。 イグサにつきましては、これまでしらぬいなどの品種育成を行ってまいりましたが、ことしの四月に国の育種指定試験を本県が実施することになり、さらに高品質で機械化に適した新品種の育成に努めてまいりたいと思っております。 そのほか、熊本型有機農業を推進するため、省農薬栽培技術や天敵、微生物などを利用した防除技術の開発、あるいは病害虫の発生予察、作物の生育予測などの技術情報システムの開発にも取り組んでいるところでございます。 なお、県の他の研究機関との共同研究につきましては、従来の枠を越えた成果を上げるため、連絡協議会を設けまして具体的に検討を始めております。 また、県の組織を越えた他の分野との技術交流につきましては、電応研や大学、先端企業、農業団体、流通グループとの共同研究によりまして、ミカンやメロンなどの果実を傷つけずに糖度が測定できる機器の開発でありますとか、農産物の鮮度保持、輸送コスト低減のための氷温輸送試験などに取り組んでいるところでございます。 いずれにしても、本県基幹産業としての農業をさらに発展させていくために、今後とも技術開発には積極的に取り組んでいく必要があろうというふうに思っております。  〔深水吉彦君登壇〕 ◆(深水吉彦君) 長期の果樹振興策により農家経営の安定と産地体制づくりに先進県となるよう、お力添えをお願いしたいと思います。 農研センターの高度利用や技術開発のすばらしさは現地でつぶさに見学しましたが、受精卵凍結技術、水田減反対策に役立つウイング心土破砕機改良などアイデアがいっぱいで、研究員の並み並みならぬ努力をかいま見て、心強く、さすが農業県熊本だと感じました。 なお、先日報道されました豚の伝染病、オーエスキー病が鹿児島で発生のニュースは、我が熊本県にも感染し、拡大の兆しが心配されます。人命には危険はないとはいえ、畜産農家にとっては大変な不安、心配事であります。県も防疫対策実施要領細則があるとはいえ、徹底した防疫と今後蔓延しないような手だてを特にお願いを申し上げます。 次に、阿蘇降灰の防災対策についてお尋ねをいたします。 昨年七月に噴火をいたしました阿蘇中岳は、消長を繰り返しながら今なお活発な活動を続け、四月末で六百八十五万トンもの大量の降灰を阿蘇地域にもたらしております。この降灰により、阿蘇地域の主要産業である農作物は、これまでタカナ、トマト、メロン、イチゴなど露地物や施設野菜、牧草地などに十四億円余の大打撃を受け、地域産業は甚大な被害をこうむっております。住民の方々は先行きの見通しもつかず日夜降灰対策に頭を痛めておられる状況であります。 去る四月二十日には、昭和五十四年九月の爆発に匹敵するほどの大きな噴火を起こし、阿蘇町、一の宮町を中心に記録的な雨まじりの降灰に見舞われ、約三千七百戸が停電し、さらに家の周りやビニールハウスなどの降灰の除去に追われるなど深刻な事態に陥りました。長期にわたり被害をこうむっておられる地元の方々に対し、心からお見舞いを申し上げますとともに、一日も早い鎮静化を祈らずにはおられません。県では、知事御自身が降灰被害状況を視察されて対策に全力を傾注されているところであり、県議会並びに我が党といたしましても、地元の実情をつぶさに視察して、住民の方々の御苦労を痛感し、降灰被害対策に懸命に取り組んでいるところであります。 降灰被害は各方面にわたっているわけですが、折から梅雨の時期でもあり、集中豪雨でもあれば、阿蘇山周辺に堆積している降灰が泥流となり、さらに白川、黒川等の河川に流入して大きな災害になることが危惧されるところであります。 降灰問題について、詳しくは私どもの同僚議員である草村議員が後日御質問をされます。私は、これらの防災対策に絞って質問をいたしたいと思います。 昨年から断続的に噴出されてきた降灰は、火口周辺の森林原野等に大量に堆積している状況であります。このことは、周辺の町村や下流域に住んでおられる方々に大きな不安を与えております。 昭和二十八年六月の白川流域の大災害が今なお私の脳裏にはっきりと残っておりますが、降灰が異常な集中豪雨によって泥流となって流下し、河川のはんらんを招き、数多くのとうとい人命や財産に甚大な被害を受けたのであります。この災害のちょうど二カ月前、四月二十七日に阿蘇山は大きな爆発を起こし、多数の死傷者を出すとともに、大量の降灰を噴出しております。何も降灰だけが二十八年の災害を拡大したとは考えておりませんが、豪雨によって白川が熊本市内に運んだ火山灰などは六百万トンを超えると言う人もおります。 これまで県におかれては、阿蘇山周辺において計画的、重点的に治山治水事業を推進されてきたところであり、二十八年災害規模の大災害が発生していないことは、降雨量の問題だけでなく、治山治水事業等の成果でもあることは承知しているつもりでございますが、今回大量の降灰が阿蘇山周辺に堆積し、それが水を含んで泥流となり下流に流れ出た場合どのようなことになるのか、大変心配しているところであります。二十八年災害のようなことが二度と起こってはなりません。 そこで、今回の降灰対策として治山治水の対策が緊急に必要と考えますが、治山、砂防の現状と対策及び白川、黒川等流域での河川の状況と対策についてお伺いをいたします。  〔知事細川護熙君登壇〕 ◎知事(細川護熙君) 治山事業につきましては、白川流域の大災害後の昭和二十九年度以降、治山事業五カ年計画などに基づきまして、県下の中でも阿蘇山周辺を最重点地区として計画的に治山施設の整備を図っておりまして、平成元年度までに約千五百基の治山ダムを設置してきたところでございます。 治山ダムは、谷の浸食を防止することによって土石の流下を抑止する働きをしていることは、御承知のとおりでございますが、こうした既設の治山ダム群に加えまして、平成二年度は、降灰対策として、災害関連緊急治山事業によりまして、四月下旬から五月初めに新たに十四基を発注し、既に着工しているところでございます。また、四月二十日の降灰に関連して、第二次緊急治山事業の採択を受け、阿蘇町の大量降灰地区に近々三基を追加設置することにいたしております。これらの治山ダムに加えまして、通常治山事業で四十八基の設置を計画しておりまして、今後とも降灰の状況に応じて必要な対策を進めてまいることにいたしております。 それから、砂防と河川の現状と対策についてでございますが、砂防事業につきましては、これまで長年にわたって土石流対策として百六十四基の砂防ダムを設置してまいりましたが、昨年来の降灰対策としては、梅雨季を考慮して、既設のダム、堆積土砂の掘削、あるいは四基のダムの新設によりまして、現在までに約二十八万立方メートルの容量を確保したところでございます。このほか、警戒避難対策として、危険度の高い渓流に土石流発生監視装置を設置いたしましたが、今後恒久対策として、平成二年度に火山砂防事業、災害関連緊急砂防事業で十八基の砂防ダムを設置する予定で、これが完成いたしますと、これまでの容量と合わせまして約百万立方メートルの土砂流出を防止することができることになるわけでございます。 また、河川事業につきましては、県管理の白川水系で十一河川を調査いたしました結果、若干の堆積が見受けられましたので、平成元年度で約四万立方メートルの掘削を行い、平成二年度で約四万六千立方メートルの掘削工事を現在施行中でございます。さらに、白川下流域では国の直轄河川改修事業として改修中でございますが、引き続き現地の状況を注意深く観察をいたしまして、適切な対応を図っていただくよう国に要望してまいりたいと思っております。 なお、阿蘇山は今後とも噴火が続くものと予想されますので、降灰については、その量あるいは河川への影響などにつきまして、広範な調査と研究を関係機関とも引き続き連携をとりながら取り組んでまいりたいと思っております。  〔深水吉彦君登壇〕 ◆(深水吉彦君) 阿蘇地方の方々は途方に暮れていると言っても過言ではありません。牧畜にしても、灰と雨で固形化し、少しの雨では流出せず、放牧できず、また蔬菜づくりも、植えつけるたびの降灰で除去作業の連続であります。我々も県民の苦しみとしてとらえ、支援協力体制をとらねばならないと思います。 各地で水防対策会議が開かれていますが、ことしは六月雨が少なく、七月大雨の予想で「雨に上し風は大洪水」ということわざがあるそうで、梅雨前線が県北にあると大雨になりやすいと予報官の話がありました。災害がないよう祈るとともに、対策に手抜かりがなきよう御努力をお願いをいたします。 次に、環境問題についてお尋ねいたします。 今日、人類の生存の基盤である地球環境の汚染と破壊の問題が世界的な関心を集めております。特にここ二、三年におけるこれらオゾン層の破壊、地球の温暖化、酸性雨、熱帯雨林の減少、野生生物種の減少、砂漠化、海洋汚染等の地球的規模で進行する環境問題に対する世界的な取り組みの進展には目覚ましいものがあり、今や調査、検討の段階から、具体的な対策の推進を求めて、国際的に国や地方自治体の政策、民間企業の事業活動のあり方、さらには一人一人のライフスタイルまでも見直していこうという、実行の段階に移っているようであります。 我が国においても、これらの国際的な動きに積極的に対応してきたほか、昨年五月には地球環境保全に関する関係閣僚会議が設置され、当面我が国が講ずべき施策の基本方針を明らかにしたところであります。また、環境庁においても、近く企画調整局に地球環境部を設置するなどの地球環境の保全に取り組む体制の充実強化が図られるようであります。 このようなときにあって、細川知事におかれましては、本年四月一日付で公害部の機構改革を行い、環境行政を総合的に推進する体制を整備されるとともに、コピー用紙に再生紙を使用したり食堂の割りばしを県産の竹ばしにかえるなどの身近な取り組みを実践されておられることは、皆様御承知でございます。 環境問題は、さまざまな要素が複雑に作用し合いながら広範な影響を及ぼすものであることから、環境政策は総合的かつ体系的に実施される必要があると考えます。また、今日問題となっている地球環境問題や身近な環境において問題となっている地下水汚染等の問題は、その原因の多くが、それぞれの地域において日常的に行われている経済活動や生活行動等の積み重ねから発生していることを考えたとき、地域住民や企業に対して直接的に指導監督等を行う県の責務は極めて重大であり、確固とした政策方針を示す必要があると考えます。 さきの三月定例県議会で、知事は、今後の環境政策の基本となる環境基本条例を年内にも制定したいとの考えを示されたところでありますが、条例制定の時期、また条例制定に当たっての理念、骨子、今後の環境行政の進め方について現在の知事のお考えをお尋ねしたいと存じます。 また、本県における環境行政を推進するに当たり、早急に対応すべき課題として、特に地下水質の保全、廃棄物対策及びゴルフ場の農薬使用の問題の三点が、県民の深い関心と論議を呼んでいることは御承知のとおりでありますが、この三点につきましても知事のお考えをお尋ねしたいと思います。 まず、地下水質の保全対策についてでありますが、本県は飲料水の七〇%以上を地下水に依存しておりますように、地下水は将来にわたって汚染から守っていかなければならない県民の貴重な資源であります。これまで知事は、地下水汚染の未然防止の観点から、地下水質保全要綱を制定されるなど具体的な施策を先駆的に実施され、その効果を上げてこられたところでありますが、今後これをより実効あるものとするために、さきの三月定例県議会において条例の制定を検討する旨を表明されたところであります。この地下水質を保全するための新規の条例制定の見通しについてのお考えをお尋ねいたします。 次に、廃棄物、いわゆるごみの問題でありますが、我々の生活活動や企業の活動は、資源やエネルギーの消費を前提にしておりますが、その結果として発生するごみの問題について、我々はどれほど環境への配慮を持って対処してまいったでありましょうか。 廃棄物は、人口とエネルギーの消費が産業革命を契機として飛躍的に増大したことに伴い、その発生量が爆発的に増加してまいりましたが、特に戦後にあっては、大量生産、大量消費に支えられた高度成長や生活様式の多様化などを背景として、商品利用サイクルの短縮化、使い捨て商品の増加などにより一段と発生量が増大し、その種類も多様化しております。 我々は、日常生活や産業活動を営む上で不可分であるこの廃棄物の処理について、余りにも無関心であったのではないでしょうか。生活に関係の深いごみをあらわす漢字が我々の身近にないということも大変なことでございまして、皆様御承知でありましょうか、辞書には「ごみ」という字がないのであります。三尺流れれば水清しとしてごみ処理に無関心で過ごしてきた我々の生活態度を端的にあらわしているのではないかという気がいたしますのは、私だけではないような気がいたします。 ましてや、このごみのうち産業廃棄物については、直接的に家庭から排出されるものではないために、まさしくその処理等についての認識、理解を得ることが困難となっており、このことが適正処理に欠くことのできない最終処分場の確保を困難にしている大きな原因の一つになっていると思うのであります。 昨今、首都圏ごみの地方への搬出の問題を初め最終処分場の確保問題、不法投棄、ごみ減量の必要性などの話題が連日マスコミ等にも取り上げられております。このごみについては、ごみの発生から処理に至るまでのそれぞれの分野において、自己の責務と役割を明確に認識し、実行していくことが必要なのであり、また、モラル、意識の問題として粘り強く取り組んでいくことこそ重要であると考えるものであります。社会全体の問題として正面から取り組むべきときが来ていると考えるものであり、県民の英知を集めた積極的な取り組みを期待するものでありますが、廃棄物に対するお考えと今後の取り組みについてお尋ねいたします。 最後に、ゴルフ場の農薬使用に関する問題についてお尋ねいたします。 ゴルフ場は、近年の好況、余暇の増大等を背景として空前のブームにあり、全国的には既設、増設中のものを合わせて二千カ所を超えるそうでありますが、本県においても現在二十七の既設ゴルフ場のほか、計画中のものが三十三あると聞いております。ゴルフの屋外スポーツとしての人気は今さら申し上げるまでもないことでありますが、最近全国的にリゾート施設の設置による地域の活性化が図られており、ゴルフ場は、その人気ゆえに中核施設として位置づけられるケースも多いようでございます。 御承知のとおり、山村等におきましては、若年層の人口流出による過疎化、高齢化が進み、経済活力が衰退し、村落共同体としての機能や自然環境の保全すら維持していくことが困難となっている所もあると聞いております。このような状況のもとで、地域開発の起爆剤としてゴルフ場の誘致を図ろうとすることは、一概に否定できることではないと思うのであります。むしろ論議すべきは、その地域の特性に応じた環境と開発の調和であり、自然環境や生活環境にいかに配慮して、地域の活性化を図る方策を見出すかであります。 ゴルフ場の農薬使用に関する問題について申し上げれば、地域の自然環境や生活環境を汚染してはならないことはもちろんですが、ゴルフ場建設反対の立場から、農薬使用が即環境汚染の元凶と決めつけてしまう感のある意見の中には疑問なしとはしないものもあるように思われてなりません。ゴルフ場の農薬使用に反対する声はあっても日本の農業の発展に農薬が果たしてきた役割を否定する声は聞かないようであります。また、我が国の農薬は農薬取締法による登録が義務づけられており、毒性、残留性、発がん性などの厳しいチェックを受けているものばかりであります。特に問題になっている残留性に関する基準は世界一厳しいものであると聞いております。ここにおいて現実的に問題とすべきは、農薬の使用を全面的に禁止するかどうかということではなく、むしろ農薬の安全使用と周辺環境への汚染防止の具体的な方策を検討することであり、ひいては、ゴルフ場の開発と県土の環境をいかに調和させていくかということであると考えるものであります。 こうした意味において、県では昨年四月に、ゴルフ場における農薬の安全使用に関する指導要綱を定め、さらに、全国でも初の試みとして専門の学識経験者などから構成される安全防除指針確立委員会を設置し、ゴルフ場における農薬の安全防除指針の策定を行っておられることに深く関心を寄せるものであります。このような科学的な取り組みは、今後あらゆる分野において開発と環境の調和の視点が不可欠となることが見込まれる中にあって、地域住民の合意を形成し、真に豊かな地域づくりを進める上で新たな展望を切り開くものとしてますます重要になると予想されるものであります。 今回、知事が、ゴルフ場における農薬の安全防除指針を策定されるに当たって、いかなる方針をお持ちか、お尋ねをしたいと思います。  〔知事細川護熙君登壇〕 ◎知事(細川護熙君) 環境問題についてのお尋ねでございますが、環境問題への取り組みは、県民を取り巻く自然環境、生活環境を総体的に把握をし、総合的かつ体系的に推進されなければならないものであることは申すまでもないところでございます。 環境問題は、一般的には極めて長い時間を経てその影響があらわれてくるものでありますし、環境汚染の進行を早い時点で明確に察知することはなかなか困難でございますが、しかし、これらの環境汚染がやがて人々の健康を害する程度にまで進行した場合には、その回復にどれだけ多大の努力を要するかということは、水俣病という深刻な公害を経験してきた我々熊本県民には容易に理解できるところでございます。したがって、環境問題が深刻化する前にできるだけ早く今後の環境行政を推進していくための基本的な規範となる環境基本条例(仮称)でございますが、この環境基本条例を制定する必要があると考えているわけでございまして、九月定例県議会に条例案を提出したいと考えております。 条例の理念、骨子などにつきましては、今後有識者や県民各位の御意見を幅広く伺いながら検討を進めていくことにしておりますが、その根本となるものは、新たな汚染を発生させないなど環境への配慮が徹底され、自然に親しむ機会を増進し、快適な生活空間を創造していくための環境との触れ合いが確保され、有限な資源として環境の恵みが守り育てられていくことによって、かけがえのない環境が県民共有の資産として次代に引き継がれていくことであると考えております。そのためには、今回の条例において、環境に関する県の施策の基本となる事項や県のみならず市町村、事業者、県民のそれぞれの責務を明らかにし、もって快適な環境の保全と創造に寄与し、県民の健康で文化的な生活の確保と県勢の発展に資するものにしたいと考えているところでございます。 また、常々申し上げているみどりの問題の推進に当たりましては、これまでも緑の三倍増計画の推進や景観条例の制定、あるいは文化振興基本条例の制定など、幅広くかつ前向きに取り組んできたところでございますが、この問題は、行政のみならず県民の自発的な取り組みがなされていくことが何よりも重要なことだと思っております。したがって、現在県民各位の間で関心が高まっております緑化や景観整備、環境の保全創造などに対する意識を今後さらに高め、その活動を支援していくとともに、みどりの拠点である公園などの管理運営などを含めまして、計画的、体系的に推進をしていくことが必要であると考えているところでございます。そのためには、議会の御支援、御協力を得ながら、良好な景観形成を推進するための基金あるいは環境保全のための土地の取得などを行う基金を新たに設けるとともに、農業公園や水俣の埋立地に計画されている公園などの管理運営なども総合的に実施できる体制が必要であると考えております。その方策として、県民各位の緑化活動を支援することを目的に設立されました財団法人くまもと緑の基金を発展的に改組していただくことが最も適当ではないかと考えておりまして、その方向でお願いをしてまいりたいと考えているところでございます。 それから、地下水質の保全のための新規条例の制定についてのお尋ねでございましたが、これまで地下水汚染を未然に防止するため、県独自の地下水質保全要綱に基づいて、対象となる事業場に対して具体的指導を実施し、それなりに成果を上げておりますが、これをさらに実効性のあるものにするため、新規条例の制定を検討している段階でございます。 この条例の骨子としては、現在の要綱で対象物質としている有機塩素化合物の三物質に新たにカドミウム、シアンなどの有害物質を加えた十二物質を対象とすること、地下浸透の禁止規定を盛り込むこと、地下水質保全目標を設定すること、罰則規定を盛り込むなどを検討しておりまして、実効性の上がる条例にしたいと考えております。 また、条例制定の時期については、さきに申し上げた環境基本条例と同じく九月定例県議会に条例案を提出したいと考えております。 それから、廃棄物対策についての基本的認識と今後の取り組みについてのお尋ねでございましたが、廃棄物は我々の日常生活や産業活動に伴って必然的に生じてくるものでありまして、廃棄物の量や内容は、我々の生活様式や社会のあり方と密接なかかわりを持っております。 現代社会は、かつてない豊かな生活を享受しておりますが、その豊かさは、極言すれば、生産、流通、消費の各段階における資源やエネルギーの浪費と使い捨ての上に築かれていると言っても過言ではございません。紙の利用の大幅な増加に代表される資源の大量消費が、地球的規模での森林の減少という環境問題につながり、また、処理場不足などによる不法投棄や不適正処理が、地域環境問題の原因の一つになっていることは御承知のとおりでございます。 廃棄物対策について抜本的に取り組むためには、単に最終処分をどのように行うかという問題ではなく、廃棄という物の流れの最下流に立って上流を見直す取り組み、例えば廃棄物となったときの処理を考慮した製品設計、廃棄物としないための工夫、再利用しやすい形での排出、廃棄物からの再生品の使用促進など、多面的な取り組みが必要だと思っております。 当然国レベルで対応していかなければならない問題も含まれておりますが、地域でできることについては、日常生活において、無用のぜいたくと浪費を憎む熊本スピリッツの原点に立ち返って、粘り強く、しかし着実に進めていく必要があろうというふうに思っております。 また、今後の取り組みについてでございますが、ただいま申し上げましたように、廃棄物対策についてはいろいろな分野がかかわっておりまして、まず廃棄物を中心に廃棄物対策を総合的に推進するための庁内連絡体制の整備を図りますとともに、廃棄物対策を進める上で、生産、流通、消費などの各分野においてどのような取り組みが必要であり、関係各界においてどのような役割を果たすことが現実的に可能であるかなどについて御意見をいただくため、有識者や県民各位による懇談会を設置したいと考えております。 また、廃棄物対策の最終的な目的は、適正な処理施設の配置と適正な処理による環境の保全ということでございますが、特に産業廃棄物の分野において、行政として一歩も二歩も踏み込んだ対応が必要とされてきていることを感じているところでございまして、各界の御意見も踏まえながら、公共関与のあり方、方法などについてさらに検討を詰めていきたいというふうに考えているところでございます。 最後に、ゴルフ場の農薬使用に関する問題についてのお尋ねでございましたが、昨年四月に定めましたゴルフ場における農薬の安全使用に関する指導要綱に基づいて報告のあった平成元年度の農薬使用量は、さきに公表をいたしましたが、一ゴルフ場当たり平均年間農薬使用量は十八ホール換算で千二百九十六キログラムということで、公表されている各県の事例を見ました場合、全国的にはおおむね二千キログラム前後の使用量ということでございました。現在策定を進めているゴルフ場における農薬の安全防除指針は、県内の病害虫の発生などの実態を踏まえ、農薬を最小限に抑えた環境に十分配慮した安全防除のあり方を目指しているものでございます。 そこで、さきに環境庁が定めた「ゴルフ場で使用される農薬による水質汚濁の防止に係る暫定指導指針」をもとに、使用農薬の種類や使用回数などを限定した農薬安全使用のガイドライン、病害虫などの診断と減農薬防除法に関しての技術マニュアルの作成について、現在安全防除指針確立委員会で今月末をめどに専門的な検討をお願いしているところでございます。この委員会での検討結果を踏まえ、県としてのゴルフ場における指針を定め、安全防除の徹底を図り、環境の保全と農薬による危害の防止に努めてまいりたいと考えております。  〔深水吉彦君登壇〕 ◆(深水吉彦君) ただいまは、知事から、条例制定の時期、また条例制定に当たっての理念、骨子及び今後の環境行政の進め方、さらには、当面緊急に対応すべき地下水質の保全に関する問題について積極的に取り組んでいく旨の答弁をいただき、真に豊かな地球環境に支えられながら、豊かな繁栄を持続し次の世代に引き継いでいくためには、冒頭にも申しましたが、国、地方自治体、企業、そして住民一人一人が、今できることから具体的な取り組みを始めることが重要であると思うのであります。 六月六日の「官報 資料版」に「環境白書のあらまし」が掲載されておりましたが、それにも、国や自治体の指導力が必要であり、国民が認識を高め、活動に参加していくための政策的誘導が必要だと論じております。条例制定が県民の環境への取り組みを動かす起爆剤となるようお願いをいたします。 我々熊本県民は、かつて水俣病という世界にも類を見ない公害の経験をいたしております。それだけに、今回の環境基本条例や緑の基金財団構想といいますか、基金の運用が今後の本県環境行政の推進の核となり、全国的にもあるいは世界的にもモデルとなるようなものとなることを期待するものであります。知事を初め執行部におかれましては、今後とも、環境行政の推進に当たって全県民挙げての取り組みがなされるよう各界各層へ積極的な働きかけを行い、この環境への関心の高まりが、単なる一過性のブームに終わることなく、永続的なものとして定着していくためのリーダーシップを発揮されんことをお願いしておきます。 次に、水俣病問題について三点ほど要望をいたします。 知事は就任以来、水俣病問題の一日も早い解決を目指して、認定業務の促進を初めとする水俣病対策に懸命に取り組んでこられたところであります。その成果も着実に実を結んでいるところであり、深く敬意を表するところであります。 まず、認定業務については、今年度から未検診死亡者等特別な事情にある方々に対して処分の促進を図るなど、大変御努力をいただいているところでありますが、この問題の一日も早い解決に向けてなお一層の御尽力をお願いいたします。 次に、チッソ県債については、昭和五十三年の発行開始以来、チッソ県債を中心とする金融支援により、チッソ株式会社の経営状況は好転しているところであり、知事初め議会や関係各位のこれまでの御努力に対しまして、深くお礼と敬意を表する次第であります。 しかしながら、チッソ株式会社の経営状況は、営業活動に伴う経常利益の黒字にもかかわらず、水俣病補償関係の損失により、結果的には赤字となっている状況であります。党といたしましては、水俣病問題の早期解決及び地域振興という観点から、今議会に提案されている県債発行はやむを得ないと考えているところであります。 また、チッソ県債は、六十二年十二月の関係閣僚会議において、平成二年度まで、すなわち来年六月の発行分までとされており、三年度以降の取り扱いについては、今年度中に関係省庁や県議会等で検討されるものと承知しております。 水俣・芦北地域は、水俣病の発生により地域経済社会の発展が著しく阻害されてきているところでありますが、今後チッソ株式会社の経営基盤の維持強化を通じて、地域の雇用確保を図り地域経済社会の安定に貢献することは、水俣・芦北地域の振興にとっては必要不可欠なものであると考えるところであります。 チッソ株式会社の水俣工場では、平成元年度において液晶を初めとする積極的な設備投資を行うとともに、工場内に製品展示や研修を兼ねたホールを建設し、雇用についても二十六名の新規採用を行うなど、自助努力の様子も見られるところでありますが、一日も早く自力で患者補償を行うためには、なお一層の努力が必要であり、もうしばらくは何らかの金融支援が必要ではないかと考えております。知事におかれましては、チッソ県債の平成三年度以降の取り扱いについて、今申し上げました趣旨を踏まえて対処していただきますよう、要望とお願いをいたしておきます。 次に、水俣湾の公害防止事業は、五十二年に着工して以来十四年の歳月と四百八十五億円の巨費を投じて進められてまいりましたが、工事による二次汚染もなく、この三月終了し、その功績により土木学会技術賞を受賞されております。これは、工事に当たられた国の第四港湾建設局や県の方々を初めとして、工事の監視を続けた監視委員会委員の先生方、地元漁民等の御努力のたまものとお礼を申し上げます。しかし、平成元年に県が行った水俣湾の魚介類の調査では、なお一部の魚種に基準値を上回るものが残存しております。そのため、県は仕切り網を残した状態で水俣湾を漁場として有効活用するよう提案しておられますが、現在のところ漁協は、この提案に対して賛同できないとし、従来どおりの補償を求めていると聞いておりますが、きのうは仕切り網の洗浄に同意があったと報道され、進展があったことを大変評価するものであります。 水俣湾の漁業は、水俣病発生に伴い、長い間厳しい状態が続いており、公害防止事業が終了した今年度を元年として、漁場の回復や漁業対策に向け、積極的な御支援、御協力をお願いいたしますとともに、平成四年の国際イベントに向けて、被害者はもちろん漁業者、市民一体となっての取り組みがなされるよう、一層の御努力とお力添えをお願いを申し上げます。 以上、要望を申し上げましたが、続きまして、第五十四回国民体育大会準備についてお尋ねをいたします。 国民体育大会は、昭和二十一年、戦後の混乱期にあって、多くの国民に明るい希望と勇気を与えて、感動的に力強く踏み出しました。この間、国民体育大会というスポーツの祭典の中から、世界に名立たる人材が輩出したところでありますが、昭和六十三年の第四十三回京都国体から二巡目を迎えることとなったことは御承知のとおりであります。 本県におきましても、知事初め執行部、県議会議長及び議員の先生方並びに県体育協会関係者等の御努力の結晶として、今世紀末の一九九九年、平成十一年に第五十四回大会開催が内々定したことは、まことに喜ばしく、関係者の尽力に対して深く敬意を表するものであります。 既に昨年の十二月、国体準備委員会において、熊本国体の開会式、閉会式の会場となる主会場の施設整備については、夏季大会主会場を熊本市、秋季大会主会場を県がそれぞれ分担し、主体的に整備することで合意されていると聞いております。このことは、熊本国体の実現に向けて一歩前進したものと申せるのではないかと思いますが、主会場の施設整備は開催年の二年前までには終わらなければならないようで、これからしますと、九年後の開催ではありますが、率直に申し上げて、用地買収、工事など考えると時間的余裕はなく、今後の開催準備はかなりハードになることが考えられます。また、主会場以外の施設整備等についても同様なことが言えるのではないかと思われます。関係各市町村の諸準備の円滑化を図るためにも極力早期に開催地の市町村の選定に留意することが肝要かと考えます。 そこで、県が主体的に整備する秋季大会主会場施設についてですが、会場候補地として既に総合運動公園の東部及び東南部一帯が決定を見たところでありますが、今後の取り組みについての県の基本的な考え方についてお伺いします。 次に、競技開催地市町村の選定は、関係市町村の施設整備及び関連道路網等周辺環境整備を考えるとき、これまた早急に取り組まなければならない重要な問題であります。このように、国体準備を円滑に推進するための基盤である県の執行体制、百八十五万県民総参加による国体開催という視点から、産学官民挙げての支援組織の構築は緊急の課題であり、このことが熊本国体の成否を左右する大きな要素であると言っても過言ではありません。そこで、国体準備に向けての推進体制について県の基本的な考え方についてお伺いいたします。 さらに、選手強化でございますが、平成元年度において各競技団体が開催した全日本選手権大会では、熊本県の目覚ましい活躍があります。中でも陸上競技におきましては、御承知の松野明美選手、池上洋二郎選手の百メートル、宮崎安澄選手の千五百メートル、三千メートルの日本中学新記録など、県民に強い印象を与えたところでありますが、国民体育大会におきましては、我が熊本県は二十一・四位となっておりますが、今後この熊本県で開催される国体に向けて選手強化策をどのように考えておられるのか、教育長の答弁をお願いし、この国民体育大会が住民の方々の士気を鼓舞するような施策を一日も早くとられますようお願いを申し上げて、質問といたします。  〔教育長松村敏人君登壇〕 ◎教育長(松村敏人君) まず、秋季大会主会場の整備に当たりましては、将来国際的な大会も開催が可能なような質の高い施設にしたいと考えております。また、総合運動公園全体としてはスポーツの拠点として広く県民に親しまれる施設になるよう、施設整備基本計画を策定をしているところでございます。 なお、これらの施設整備につきましては、御指摘のように時間的に相当厳しいものがございますが、関係者の御理解、御協力を得ながら、最善の努力をしたいと考えておりますので、県議会の御支援をお願いする次第でございます。 次に、国体準備の推進体制につきましては、昨年八月に設置をいたしました第五十四回国民体育大会熊本県準備委員会を九月をめどに拡充強化をいたしまして、開催基本方針や開催地市町村選定方針など、国体準備に関する主要な事項につきまして御審議いただきたいと考えております。 なお、庁内の体制につきましては、本年四月に職員を増員し、また、名称も国体準備推進室に改めまして拡充強化を図ったところでございます。 最後に、選手強化の問題でございますが、現在熊本県スポーツ振興審議会に、長期的展望に立った一貫性のある競技力向上対策についてということで諮問をいたしているところでございまして、本年九月ごろには建議をいただけるようでございます。今後、この建議を尊重し、十分生かしますとともに、関係方面と連携を図りながら競技力向上に努めてまいりたいと存じます。  〔発言する者あり〕  〔深水吉彦君登壇〕 ◆(深水吉彦君) ただいま会場から声がありましたように、教育庁だけの取り組みでいいのかどうか、大変危惧を持っております。どうか一日も早く全庁的な取り組みを、あるいは県民の願いを込めての国体を盛り上げるための取り組みを、よろしくお願いしたいと思います。 以上で自由民主党を代表しての質問を終わらせていただきますが、知事のいかにして熊本を盛り上げるかという、やる気のある答弁に接し、来年以後の県政のリーダーシップを発揮される心構えを感じました。細川県政の一層の御活躍を願ってやみません。 早口で質問をしてお聞き苦しかったことだろうと思います。御清聴ありがとうございました。(拍手) ○議長(北里達之助君) 昼食のため午後一時まで休憩いたします。  午前十一時四十分休憩      ───────○───────  午後一時五分開議
    ○副議長(鏡昭二君) 休憩前に引き続き会議を開きます。 日本社会党代表中島隆利君。  〔中島隆利君登壇〕(拍手) ◆(中島隆利君) 日本社会党の中島隆利でございます。党を代表してただいまより代表質問を行います。 最初に、環境問題についてお尋ねいたします。 私は、昨年十二月の定例県議会の代表質問でも環境問題を中心に取り上げました。その中で、環境基本条例の制定、環境に対する基本的認識と総合的な環境行政の体制を確立するよう強く求めたところであります。それに対し、知事は、現行の関係法令による行政指導では不安な面もあるので、環境基本条例の制定と環境行政の体系的、総合的推進体制をつくるため検討していくことを明らかにされました。さらに、ことしの年頭記者会見では、環境基本条例の制定と機構の改革、環境保全への具体的な積極的取り組みを発表され、ことしの県政では、環境問題を最大の課題として取り組むことを決意されています。そして、ことしの四月には、環境問題全般にわたって全庁的に取り組むための機構改革もいち早く実施され、環境基本条例制定に向けての検討委員会が近く発足するということであります。知事のこれらの積極的な取り組みについて深く敬意をあらわしたいと思います。 しかし、熊本県における環境問題は非常に深刻な問題が起こっています。地下水の汚染問題、ゴルフ場問題、産業廃棄物処理場問題、水俣病問題等々、一刻の猶予も許されない課題が山積しています。県民の不安解消と環境保全のための具体的な実効ある施策が緊急に求められています。そのためには、実態の把握はもちろんでありますが、県民も生活と産業活動すべてにわたって環境に対する基本的認識と環境保全に対する全県民的行動が必要であります。 そこで、知事にお尋ねいたしますが、環境基本条例の制定に向けての取り組みでありますが、午前中の深水議員の質問に対する答弁で、九月議会に条例案を提案したいという答弁でありました。検討委員会は、学識経験者や県民の代表を入れた十名程度で発足するということでありますが、環境基本条例は、環境行政の基本的なあり方や理念を明らかにし、良好な環境の確保を図るため、県の責務、事業者の責務、県民の責務を明確にしなければならないと考えます。環境基本条例は、良好な環境の確保を図るために、すべての県民が生活そのものの行動指針というものをつくるわけでありますので、検討の段階から、各階層の広範な県民の代表の意見を反映すべきであり、条例案も単なる基本的理念だけでなく、実効ある内容にしなければなりません。 そこで、知事にお尋ねいたしますが、検討委員会の構成及び今後の検討の進め方についてどうなされるのか、お尋ねいたします。 次に、環境アセスメントの実施についてでありますが、ゴルフ場やリゾート開発等では環境影響が非常に大きいわけであります。そこで、環境基本条例の中に環境アセスメントを準用し、開発行為に対する環境保全の実効ある対応が必要であると考えますが、知事の所見をお尋ねいたします。 次に、地下水の汚染防止対策についてお尋ねいたします。 熊本県は、八つの一級河川を初めとして多くの中小河川があり、これらの豊富な水資源によって、水道水の水源を全面的に地下水依存しているのが現状であります。特に熊本市とその周辺においては、水道水をすべて地下水で賄い、八十五万人以上の人々の生活を支えていると言われます。しかし、その全国有数の地下水が、今トリクロロエチレン等の有機化合物による汚染が拡大し、また、先日四月十八日には、富合町周辺六市町で、飲料用井戸から水道水質基準を上回る砒素が県内で初めて検出されたことが明らかになりました。この砒素検出は、県が平成元年度に熊本都市圏域で熊本市など十九市町村で実施した地下水の有害物質調査とその後の緊急調査などでわかったもので、百二十九本の井戸調査の中から六十八本の井戸から砒素が検出され、富合町の井戸四本から、水道水質基準一リットル中〇・〇五ミリグラムを上回る測定結果が出たわけであります。 現在、県は、砒素検出の原因究明調査を実施中でありますが、富合町に隣接する熊本市飽託郡飽田町、天明町、宇土市、下益城郡城南町、益城町を、さらに広域的な地下水の実態調査を関係市町と連携し取り組んでいます。この砒素検出が自然的要因かあるいは人為的要因によるものか、有識者の意見聴取や類似事例など情報収集して、関係市町と連携をとりながら調査、検討が行われています。 砒素は、自然界にあるとは言われますが、鉱物の中に含まれるもので、今回のように、広範な地域に、しかも水道水質基準値を超過する砒素が検出されるということは、何らかの人為的要因が非常に可能性が強いのではないかと思われます。砒素は、毒性が強く、人体への影響が非常に危険な物質でもあり、しかも飲料井戸で検出され、広範な地下水汚染が考えられますので、まず、検出周辺市町村地域の実態把握に早急に取り組み、さらにその原因究明に全力を挙げていただきたいと思います。 全県下の地下水質測定計画が昨年度から実施され、平成元年度に熊本市と都市圏十九市町村が完了し、平成二年度は城北二十九市町村、平成三年度は城南五十市町村が計画されています。 今回新たな有害物質、砒素が広範な地域から検出されたわけであります。地下水汚染が全県下に広がっているおそれがあり、県民の不安を解消し、汚染防止対策の完全な、早急な対策を行うためにも、平成三年度までの全県下の地下水質測定計画を平成二年度に繰り上げてでも緊急に実施すべきであると考えますが、今後の地下水質測定計画の見通しについてお尋ねいたします。 県下の地下水汚染の実態は、さきに述べたとおりでありますが、熊本県は、昭和六十三年四月に、県独自の熊本県地下水質保全要綱を制定し、今日までこれに基づき、有害物質を使用する事業者を指導してきました。これまで三百四十五件の立入調査を行い、二十六件の改善指導を行っています。しかし、この要綱の対象物質は有機塩素系の三物質だけで、事業所の自主管理を基本としているので、要綱の効果が疑問視されてきました。ところが、昨年十月一日から水質汚濁防止法が改正され、事業者に対する有害物質の地下浸透禁止の規定が盛り込まれ、それに違反した場合は罰則を科する厳しい規則がとられました。 全国で飲料水の地下水依存率は二〇%程度でありますが、熊本県は全体で八〇%に達しています。特に熊本都市圏は一〇〇%地下水に頼っています。県民生活における地下水の位置づけは他県に比べて極めて高いのであります。しかし、熊本県の地下水の汚染は、トリクロロエチレン等有機塩素化合物の検出や砒素の検出、地下水の低下による塩水化等々、地下水の汚染が確実に高まっています。 そこで、知事にお尋ねいたしますが、知事は、本年の年頭記者会見で、水質保全要綱を条例化することを明らかにされました。熊本県の地下水をこれ以上悪化させず、すべての有害物質から地下水汚染の未然防止を行うために、抜本的な実効ある地下水質保全条例を早急に制定すべきであると考えますが、条例化に向けての知事の考え方をお尋ねをいたします。  〔知事細川護熙君登壇〕 ◎知事(細川護熙君) 環境基本条例の制定に係る検討委員会の構成と今後の対応についてのお尋ねでございましたが、今や環境問題は、全世界が共通の課題として取り組み、地球環境問題から身近な環境の問題についてまで具体的な問題解決のための行動を起こそうとしているところで、まさに焦眉の急として対策を講じるべき課題であると認識をいたしております。 そこで、本県におきましても、環境問題が深刻化する前に、できるだけ早く今後の環境行政を総合的かつ体系的に推進していくための基本的な規範として基本条例を制定する必要があると考えますわけで、九月定例県議会に条例案を提出したいと考えております。 午前の深水議員の御質問にもお答えをしたところでございますが、環境問題を解決するために、個人のライフスタイルから、民間企業などの事業活動や政策のあり方までも見直していこうという動きに対応して、今回基本条例を制定することによりまして、今後の施策の基本となる事項や、県のみならず市町村、事業者、県民のそれぞれの責務を明らかにし、快適な環境の保全と創造に寄与し、県民の健康で文化的な生活の確保と県勢の発展に資することにしたいと考えております。したがって、今回の条例の制定に当たりましては、県内の有識者の中から、環境行政に造詣の深い学識経験者、環境関係の行政審議会代表、市町村行政関係者、事業者や一般県民、こうした方々十人に検討委員会の委員になっていただきますとともに、幅広く県民、事業者などを対象として、環境基本条例や今後の環境行政に対するニーズに関する意識調査を行うなど、多方面から御意見を拝聴しながら検討を進めていくことにいたしております。 環境問題の解決に当たっては、申すまでもなく、行政のみならず県民の自発的な取り組みがなされていくことが重要でありますし、この環境基本条例の制定を契機として、今後県民各位の間で環境に対する意識がさらに高まっていくことを期待をしているものでございます。 なお、この条例におきましては、県、市町村、事業者、県民の責務を明らかにしたいと考えておりますが、環境アセスメントの導入につきましては、国や他の自治体の状況なども参考にしながら、検討委員会におきましてさらに検討をしてまいりたいと考えております。 それから、地下水汚染防止対策についてのお尋ねでございますが、本県の地下水は、御承知のように、飲用水として多量に使用されている貴重な資源であり財産であることは、県民ひとしく認識をしているところでございまして、私としても、地下水の質、量の両面にわたって将来ともしっかり確保されるように積極的に取り組んでいるところでございます。 まず、砒素の問題でございますが、砒素は、お話しのように、鉱物などの天然資源や一般土壌中に広く存在する物質でございますから、地下水質に砒素が検出された原因はなかなかつかみにくいわけでございますが、しかし、何としてもこの原因を究明しなければならないわけで、これに関連する多方面からの情報収集や有識者の方々の御意見を伺っているところでございます。 お尋ねの今後の地下水質測定計画の見通しについてでございますが、県下全域にわたる地下水質概況調査を平成元年度から実施いたしております。平成元年度は熊本地域十九市町村について調査を実施したところでございまして、本年度は県の北部地域二十九市町村、三年度は県の南部地域五十市町村を実施すべく計画をしております。 計画を繰り上げて早く調査を実施すべきというお話もございましたが、調査が何分広範囲に及びまして、また、一キロのメッシュ調査で実施をしておりますことから、調査井戸数が多くなりまして、井戸の選定などにも時間を要しますし、さらに分析にも慎重を期しておりますので、繰り上げて調査を実施するということはなかなか難しいと考えております。ただ、緊急に調査を要するような事態が発生した場合には、随時対処できるような取り組みを考えていきたいというふうに思います。 それから、地下水質保全要綱の条例化についてもお尋ねがございましたが、これも午前中にお答えいたしましたとおり、現行の要綱をより実効性のあるものにするために、現在検討作業を進めているところで、九月の議会に条例案を提出させていただきたいと考えております。  〔中島隆利君登壇〕 ◆(中島隆利君) 環境アセスメント導入については、国あるいはその他の自治体の状況を見ながら検討すると、こういう御回答がございました。質問の中にも申し上げておりましたが、千葉県は、昭和五十五年十二月から、千葉県の環境影響評価の実施に関する指導要綱ということで既に実施をいたしております。ぜひひとつ先進的な県の事例を調査をいただきまして、この条例と同時に実施をいただきますよう心からお願いをしておきたいと思います。 それでは、次の質問に入ります。ゴルフ場建設問題について、ゴルフ場等大規模開発の規制とゴルフ場一%枠問題について。 知事は、昨年五月から、ゴルフ場開発の総面積を県土の一%以内に抑えることを打ち出し、本年二月一日以降のゴルフ場建設申請については、事前協議に応じない規制処置をとられました。これは、熊本県の現在の既設ゴルフ場が二十七カ所、計画中が三十五カ所、計六十二カ所で、総面積七千五十六ヘクタール、県土面積の〇・九八%になったからであります。ゴルフ場開発の総面積を県土の一%枠としたために、現在事前指導済みのものや事前指導を受けている三十五カ所のゴルフ場の計画が、事前指導と関係法律をクリアすると建設されてしまいます。そうしますと、この六十二カ所のゴルフ場の総面積は七千二百九十三ヘクタールで、荒尾市全土を上回り宇土市の面積に匹敵する広さであります。 今日本列島はゴルフ場建設ラッシュで、本年三月現在でオープンしているのが一千七百九カ所で、造成中が三百十五カ所、申請・計画中は九百十カ所に達しています。 森林伐採による地球温暖化や自然環境破壊に対する世論の高まり、そして水源や地下水の農薬汚染の不安が高まり全国各地で建設反対の運動が起こっています。熊本県でも、私が新聞で知る範囲でも、十カ所以上の地域で建設反対の運動が起こっています。いずれも、水源や地下水の農薬汚染、そして森林伐採等による環境破壊に対する不安のための反対であります。 一方では、地元市町村自治体や地権者が、地域振興や過疎脱却のため誘致賛成の運動もあります。所によっては、町内の対立や住民間のトラブルにまで発展しかねない状況にあります。本当にゴルフ場の建設が、水源や地下水を汚染せず、環境を破壊することなく、自治体や地域住民の地域振興策としての合意形成ができるよう徹底した公開と民主的な討議が必要であると考えます。そのためには、県と関係市町、住民が、単なる一%の規制策だけでなく、ゴルフ場開発計画地域が、水源や地下水汚染、環境保全、地域振興の点から総合的に判断して開発の適否を決められるゴルフ場の開発事業に関する指導要項の見直しとゴルフ場開発事業の規制方針の抜本的見直しが必要であると考えます。千葉県は昨年十二月から実施しています。十八ホール以上のゴルフ場を建設する際は、面積に関係なく環境影響評価、環境アセスメントを行い、ゴルフ場開発による環境破壊の未然防止に力を入れています。 そこで、知事にお尋ねいたしますが、現在のゴルフ場建設の住民トラブルを解消するためにも、ゴルフ場開発総面積の県土一%枠を見直して、現行のゴルフ場の開発事業に関する指導要項、ゴルフ場開発事業の規制方針の見直しをしていただきたいと思います。 二番目に、ゴルフ場の農薬汚染防止対策について。 ゴルフ場の農薬汚染問題は、三年ぐらい前から全国的に問題になり、各地域で既設ゴルフ場に対する農薬汚染対策の要求や地域の環境を破壊するとして反対運動が多数起こっています。そこで農水省は、一九八八年八月二十五日に「ゴルフ場における農薬の安全使用について」という農蚕園芸局長名の通達を出して、これまでゴルフ場での農薬使用について何の指導もしてこなかったため、ゴルフ場も農薬取締法の対象とするという通達を出したわけであります。この通達では、登録農薬を使うこと、使用に当たっては使用上の注意を遵守すること、危害防止対策を行うことの三点について指導しました。しかし、この通達では、使用上の注意を守れというだけで、だれがチェックするのか、また、危害防止対策は具体的に何をやれということもなく、お粗末な指導文書であります。 熊本県では、一九八八年十二月定例県議会で、我が党が取り上げ、既設ゴルフ場の農薬使用状況の調査とゴルフ場における農薬汚染防止対策を求めたわけであります。しかしこの指導要綱も、登録農薬の使用、農薬管理指導責任者の設置、届け出農薬販売業者からの購入、農薬安全使用研修会への参加、農薬使用状況の記帳・報告、排水の定期自己調査等であります。すべてゴルフ場の自己調査、自主報告に頼っているのが現状であります。 環境庁は、ゴルフ場で使う農薬の環境への影響が懸念されるというので、去る五月二十三日、自治体がゴルフ場に対し、農薬の使用について行政指導する際の目安となる暫定指導指針を発表し、各都道府県知事に送付しました。しかしこの指導指針も、二十一種類の農薬に限定し、ゴルフ場排水口からの排水の指針値を、すべて水道水での許容濃度の十倍に設定したものでありますが、農薬の総量規制や大気中での汚染調査、地下水の汚染調査など、現在住民団体などの不安を解消するものになっていません。 熊本県は、現在独自でゴルフ場の農薬の使用指針を定める専門委員会を設置し、検討を進めています。専門委員会は、本年四月二十六日に設置、開催され、委員には学識経験者と農政部長、そしてゴルフ場設置者を含む六名で構成されており、専門部会を設けながらゴルフ場における農薬指針を定めるということでありますが、これまで二回目が五月三十一日開催されております。県民の中からは、この専門委員会が、どのような構成で、何を討議し、どのような指針を検討するのか疑問視されています。専門委員会が非公開で行われているため、県民の間からは、ゴルフ場農薬汚染問題が、これだけ県民の関心事になり不安に思っているのに、このような重要な問題を密室で論議し、結論だけ知らせるのはおかしいと指摘されています。 全国では、ゴルフ場農薬汚染防止対策として、いろんなことが検討され、実施されています。無農薬ゴルフ場や低農薬散布等が住民の要求で実施されているゴルフ場も出てきております。 熊本県における既設二十七ゴルフ場の平成元年度の農薬使用状況の実態が調査され、報告されています。それによると、県下のゴルフ場で使用された農薬は九十二種類、一ゴルフ場当たりの平均使用量一・三トン、農薬使用総量は約三十三トンに上ることが五月三十一日に発表されました。全国平均の一ゴルフ場当たり農薬使用量二・二トンを下回ってはいるが、熊本県の場合、自己申告の調査のため、実態をあらわしているかわからないということであります。 我が県の既設ゴルフ場や現在建設予定地として候補に上がっている所は、ほとんど景観のいい山腹や山のすそ野、里山林等であり、水源地や農業用、生活用水に欠かせない水源涵養地であります。そこで九十種類以上の農薬が、一年間平均一・三トン、最高二・九トンも使用されるわけであります。 熊本県は、さきの地下水汚染防止対策の項で申し上げましたが、地下水の汚染が進行しつつあります。熊本県の地下水を守り県民の命を守る上からも、ゴルフ場における農薬汚染防止対策と監視体制の確立が必要であります。 そこで、知事にお尋ねいたしますが、ゴルフ場の農薬防除指針確立委員会での審議状況と、どのような指針を検討し、いつ答申されるのか、お尋ねいたします。また、現在検討されている指針と現在施行されているゴルフ場における農薬の安全使用に関する指導要綱とはどのように関連するのか。さらに、現行指導要綱は、自己調査、自己報告で信頼性に欠けるという指摘がありますが、条例化等に改正し、実効あるものにする考えはないかどうか。また、ゴルフ場の農薬汚染防止を住民監視の中で徹底するために、地域住民との公害防止協定の締結を開発許可の条件にすべきであると考えますが、知事の御所見をお尋ねいたします。 次に、産業廃棄物処理場建設問題についてお尋ねいたします。 我が党としての産業廃棄物処理場建設問題についての具体的な項目については、我が党の鬼海県議が一般質問で取り上げますので、私は地元でありますので、二見地域の産業廃棄物処理場建設問題についてお尋ねいたします。 私も昨年の十二月定例県議会で、この産業廃棄物処理場問題について取り上げ、これだけ社会問題化している産業廃棄物問題については、県、市町村行政が責任ある積極的な対応を行い、産業廃棄物処理業者及び住民との十分な対話を行いながら、問題解決の方策として、ブロック会議の設置を行い検討するよう強く求めました。しかし、行政は、県、市町村自治体とも産業廃棄物の物の流れをチェックするだけで、肝心な産業廃棄物処理場建設問題については全く対応がなく、消極的であります。しかも、ブロック会議は準備会が持たれただけで今もって発足をしておりません。そのために、今産業廃棄物処理業者や処理場建設地の住民は深刻な問題を抱え、不測の事態が起こりかねない状況にあります。行政は直ちに市町村自治体、産業廃棄物処理業者、企業、住民が一体となって、ふえ続ける産業廃棄物をどうするのか、処理場をどうするかを、徹底した行政が積極的に関与して、ブロック会議で地域ごとの方向を見出すべきであると考えます。 そこで、二見地域の産業廃棄物処理場の建設問題についてお尋ねいたしますが、去る六月五日、地元住民の九割に近い人々の反対署名による陳情が八代と県に出されました。その陳情による地元住民の反対は、次のようなものであります。 二見地域は、八代市の南端に位置し、緑の山々に囲まれた自然環境に恵まれた山間地であります。二見川水系と下大野川水系とに集落が広がり、この半分以上は二見川流域で生計を営んでいます。また、河口には八代唯一の洲口海水浴場と貝養殖場の漁場があります。建設予定地の植松地区は、旧国道の赤松太郎の中腹から八代、二見川に入った所で、標高百二十メートルの自然林と一部田んぼを含む四万二千平方メートルの用地であります。この地域は二見川支流の水源地であり、もしこの予定地に四万二千平方メートルの処理場が設置された場合、九州一円から一日平均ダンプカー三十台分の産業廃棄物が搬入されるだろうという設置者の地元説明であります。 処理施設は、管理型と安定型で、廃棄物の浸透水は一切外には流さないというものでありますが、四万二千平方メートルの標高百二十メートルの処理場は、地質が蛇紋岩質で、大雨にはよく鉄砲水で河川が一気に増水し、はんらんし、災害を起こす常襲地域であり、もし産廃処理場ができると、必ず土砂流水と地盤沈下等で処理施設が亀裂が起こり、廃棄物処理場の排水が地下に浸透して河川に流れ込むだろうという不安が全住民にあるわけであります。それは、建設予定地から河口の洲口まで三キロメートル程度しかなく、二見川に沿った集落は、すべて二見川に流れ込む数少ない地下水を利用して飲料水としているからであります。そのことによって、二見川上流の水源地にできる産廃処理場建設に対し、二見赤松町、二見本町、二見下大野町、二見洲口町の全住民が反対に立ち上がっておられるわけであります。 反対の理由は、水源地である川の上流地域の自然環境破壊、排出される汚水による生活用水や河川並びに海域の水質汚濁、養殖貝の死滅などのおそれがあるとして、地元住民の九〇%以上の方々が反対署名をして市、県に陳情されています。住民の反対代表組織ができており、各町内嘱託員、十八区の区長さん、総社協、民生委員、二見漁協組合等の団体の反対協議会も組織され、全住民の反対運動となっています。 六月五日に、八代市長、八代市保健所長を通じて細川知事に出されていますが、そこで執行部にお尋ねいたしますが、現地では既に道路の建設に着手されていると住民の方の声でありますが、この道路建設については届け出許可がなされているのかどうか、お尋ねいたします。 処理施設届添付書に、付近住民の同意書と区長の同意書、水利権者の同意書、市町村長の意見書が必要となっていますが、これが完備しなければ受理されないのかどうか。また、九〇%以上の地域住民の反対の意見のある中で県はどのように指導をなされるのか。また、地元住民の反対する地域環境の中で、県としては処理場建設予定地として適否をどのように判断されるのか、お尋ねいたします。  〔知事細川護熙君登壇〕 ◎知事(細川護熙君) ゴルフ場など大規模開発の規制とゴルフ場一%枠問題についてのお尋ねでございますが、昨年五月、ゴルフ場総面積は県土の一%以内を限度とするという方針のもとに、ゴルフ場の開発事業に関する指導要項を制定をいたしまして、その中で、自然環境の保全、災害防止などに十分な配慮を行うとともに、地元の市町村、地域住民との調整を図った上で、良好で適正な開発が行われるよう指導をしてきたところでございます。このゴルフ場の総面積を県土の一%以内とする基本方針は、全国的に見ても厳しいものであると考えております。しかし、本年一月末現在で総面積が一%に近づくことになりましたため、二月一日以降は、先ほどもお話がございましたように新規のゴルフ場開発の事前協議には応じておりません。また、現在の三十五のゴルフ場の開発計画につきましても、事前指導が終了した時点で直ちにゴルフ場建設につながるわけではございませんで、改めて関係法令などに基づく許認可手続などを行う必要があるわけでございます。県としては、今後とも指導要項に基づいて、環境保全や地域振興の問題につきましても、地域住民の十分な御理解のもとにゴルフ場開発が行われますように指導してまいりたいと思っております。 なお、環境保全に関しましては、従来より必要な場合には環境保全調査を指導してきたわけでございまして、今後とも適切に対処してまいりたいと考えております。 それから、ゴルフ場の農薬問題につきましては、さきに深水議員の質問にもお答えをしたところでございますが、現在策定を進めております安全防除指針は、昨年四月に制定したゴルフ場における農薬の安全使用に関する指導要綱に準拠して、一層の安全防除を確保するため、本県の実情に即した具体的な防除技術などのガイドラインと技術マニュアルを示すものでございます。そこで、学識経験者などで構成する委員会を設置をいたしまして、病害虫などの診断、減農薬防除法、使用農薬の種類、回数などについて、六月末をめどに専門的な検討をお願いをいたしております。 なお、現行の指導要綱の遵守につきましては、農薬使用の記録の励行と点検、立入検査指導を行うなどして実効性の確保に努めているところで、さらに、このたび県として新たな安全指針に基づいて安全防除の徹底を図りまして、環境の保全と危害の防止に努めてまいりたいと思っております。 また、公害防止協定についての御提案でございますが、熊本県ゴルフ場の開発事業に関する指導要項で、「開発事業者は、事前協議が整った開発事業を実施しようとするときは、原則として市町村長との間において事業の施行に関し必要な事項について協定を締結するものとする。」となっておりまして、協定を締結する際は、地域住民の声にも十分耳を傾けるように指導をしてまいりたいと思っております。 以上でございます。  〔環境公害部長佐藤幸一君登壇〕 ◎環境公害部長(佐藤幸一君) 二見地区の産業廃棄物処理場建設問題についてのお尋ねでございますが、最終処分場の設置届につきましては、県に対して事前協議を行うことを原則としております。この件につきましては、現在のところ事前協議の申し出はなされておりませんで、したがいまして、答弁も一般論となることをお許しいただきたいと思います。 御承知のとおり、産業廃棄物を適正に処理することの社会的な意義は極めて大きいものがございまして、適正処理のためには最終処分場の確保は必要不可欠なものでございます。しかし、いろいろな理由から反対が多く、その確保が困難な状況にあり、県といたしても苦慮しているところでございます。 まず、道路建設についての届け出許可につきましては、取りつけ道路は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律の届け出対象施設ではなくて、現在のところ届け出はなされておりません。 また、お尋ねの付近住民の同意書、水利権者の同意書、市町村長の意見書等につきましては、最終処分場設置の届け出に際しまして添付するよう指導しているものでございます。これらの書類は法の定めるものではございませんが、まず、付近住民あるいは水利権者の同意書につきましては、同意書の取得を通じまして、事前に住民へ計画内容が周知されることを期待したものでございます。また、市町村長の意見書につきましては、事前に計画内容を知りまして、地域の特殊事情を加味し、特に留意すべき点、他の法令との関係、市町村独自の計画との整合性等について、意見を述べていただくことを目的としたものでございます。 最終処分場の設置についての住民の理解については、設置予定者に対しまして十分説明を行うよう指導しているところでございますが、この事例につきましては、事前協議を受けた段階で実態をよく把握し、関係市町村とも連携を密にして対応してまいりたいと思っております。  〔中島隆利君登壇〕 ◆(中島隆利君) 産業廃棄物問題については、前段でも申し上げました。日本全国的な問題でもありますし、今や世界的な問題にもなっているということであります。そのような大きな問題を地域住民と業界だけにこの問題の解決をゆだねるという、その県の姿勢を私は批判をしたいと思います。というのは、既に二見地域については現地説明が始まり、そして設置に向けての具体的な検討がなされているんです。ぜひひとつ、今御答弁がありました一般的な答弁じゃなくて、本当に県として産業廃棄物処理場をどうつくっていくのか、あるいは市町村自治体とどう公的なかかわり合いを持ってつくっていくのか、そういう姿勢になって対応していただきたいと思います。 御答弁もありましたが、産業廃棄物懇談会を発足されるということであります。またこういう機関をつくって、そこだけで論議をしてそして結論を押しつける、こういうことであってはならないと思います。私は、私が当初提起をしました市町村ブロック会議の発足をぜひ早急にしていただいて、市町村行政と住民と業界と徹底した論議をしながら、社会にどうしても必要である産業廃棄物処理場をつくっていくという、そういう観点で対応をお願いをしておきたいと思います。 次に、水俣病問題についてお尋ねをいたします。 水俣湾の公害防止事業と汚染魚対策についてお尋ねいたします。 水俣湾公害防止事業は、水俣湾内に堆積したチッソ水俣工場から長期間にわたって排水された水銀汚濁を、環境庁が示した除去基準、水銀濃度二五ppm以上、最高濃度六〇〇ppmに達している百五十万立方メートルの水銀汚濁を安全に除去し、水俣地域の快適な居住環境ときれいな漁場に回復する目的で実施された事業が水俣湾公害防止事業であります。事業は、昭和四十九年から本年三月三十一日までの十六年間、総事業費四百八十五億円が投入されて実施されたわけであります。水銀汚濁が除去され、きれいで安全な水俣湾として漁場が開放されるはずであったわけでありますが、しかし、水俣湾内の魚介類が、厚生省の定める暫定基準値総水銀〇・四ppm、メチル水銀〇・三ppmを上回る魚が十六種もいることが判明いたしました。そのために、水俣湾は今もって仕切り網が存置され、汚染魚を監視していくことになりました。 現在、水俣湾魚介類対策委員会が設置され、その汚染魚の追跡調査が行われていますが、当初、県は、暫定基準値を下回る約八五%の魚介類は安全であるとして、水俣湾の自主規制を解除し、その分を買い上げて対処していくことを明らかにしました。しかし、関係漁協や熊本県の鮮魚販売連合会、患者団体、そして多くの県民が反対したために、県は、仕切り網を当分存置して漁場開放を見送り、汚染魚を追跡調査していくことになりました。 徳山湾では、水銀汚濁の除去基準を一五ppmに引き下げてヘドロ除去がなされました。暫定基準値を上回る五種の汚染魚は、昭和五十二年のヘドロしゅんせつ終了後から五年間経過し、昭和五十八年に汚染魚がなくなり、安全宣言が行われています。水俣湾の場合は、水銀汚濁の除去基準を二五ppmとしており、徳山湾より非常に高くなっています。 水俣湾の水銀汚濁のしゅんせつ工事も昭和六十二年十二月に終了しましたが、現在でも暫定基準値を上回る汚染魚が十六種もいます。先日、五月三十日に開催された監視委員会でも、本年一月実施された水俣湾内魚介類調査が発表されましたが、カサゴは暫定基準値を上回る総水銀値で平均〇・七ppm、最高で一・三九ppmとなっています。依然として高濃度の汚染魚が生息しています。暫定基準値を下回り安全宣言できるのがいつになるかわからない状況にあります。今後、汚染魚の追跡調査を完全に実施し、間違っても汚染魚が市場に出回ることのないよう万全な措置を講じなければなりません。そのためには、現在の仕切り網の撤去と漁獲規制の解除は、汚染魚の暫定基準値を下回り安全が確認されるまで絶対に実施すべきではないと考えます。先日、六月五日開催された衆議院環境委員会でも、厚生省と水産庁は、汚染魚が食卓に出回らないためにも漁場を開放すべきでないという見解を示しました。 水俣湾の公害防止事業は、水俣湾の水銀汚濁を安全に処理し、きれいな海を取り戻し、環境を復元し、安全を確認した上で漁民や県民に返していくまでが公害防止事業であると考えます。そのためには、原因者であるチッソや国、県は、きれいな海を取り戻し、安全を確認するまで公害防止事業として全責任を持って遂行すべきであります。 そこで、知事にお尋ねしますが、これまでの公害防止事業と今後の事業の関係、さらに、汚染魚の対策、仕切り網の撤去及び漁場の開放についてどのように考えておられるのか、お尋ねいたします。 漁業補償問題について、次にお尋ねいたします。 水俣市漁協とは、水俣湾公害防止事業に伴う補償として、埋め立てによって消滅する漁場の一部の放棄と十五年間の湾内の公害防止事業に伴う操業禁止のための補償が二回にわたって総額三十三億一千五百万円で協定が結ばれています。しかし、公害防止事業が本年三月三十一日に完了しましたが、汚染魚が十六種いるため、仕切り網を当分の間存置し、湾内の操業が事実上制限が継続され実施されています。そこで、現在熊本県と水俣市漁協との間で本年四月以降の操業禁止に伴う対策が話し合われていますが、今もって解決していません。仕切り網が海藻や貝類の付着で沈み始めており、一日も早く洗浄しなければなりませんが、漁業補償の交渉が難航して今もって実施されていません。 仕切り網が存置され、漁業が制限されている以上、当然その補償は、公害防止事業に伴う汚染魚対策の一環としてチッソ、国、県が責任を持って行うべきであります。仕切り網が破れて汚染魚が湾外に流出すると大変なことになりますので、一日も早い解決が望まれています。執行部の今後の対応についてお尋ねいたします。 三番目に、水俣病の一日も早い解決についてであります。 水俣病問題は、何といっても患者の全面救済が最大の課題であります。本年三月三十一日には、公害防止事業による水俣湾のヘドロのしゅんせつと埋立事業も完了し、平成四年には、環境復元を記念して、イベントと水俣湾埋立地及び周辺地域開発整備が具体化されつつあります。このような状況の中で、水俣病の一日も早い解決と地域住民の健康不安にこたえるにも、患者の全面救済と地域住民の健康管理についての具体策が早急に求められています。 地元関係者との協議のため、水俣病問題対策協議会が昨年九月設置され、申請者の各種団体とも昨年九月より実務担当者会議が幾度か持たれています。さらに、各団体とチッソが水俣市とも協議が行われています。その中で具体的な要求課題も出てきていると聞きますが、この際、県や国、チッソ、議会すべてが水俣病の一日も早い解決のために、本格的な話し合いを積極的に推進して、患者の全面救済と地域住民の健康不安に対する具体的解消策を見出すべきだと考えます。知事の今後の取り組みについてお尋ねをいたします。  〔知事細川護熙君登壇〕 ◎知事(細川護熙君) 水俣湾の公害防止事業と汚染魚対策についてのお尋ねでございますが、公害防止事業は、申すまでもなく、水俣湾などに堆積した水銀含有汚泥の除去を目的として、県が事業主体となり、原因者であるチッソの負担において実施されたものでございます。 この事業に国と県が関与したのは、水俣湾にはチッソ以外から流出した土砂や生活排水が含まれていること、魚介類の残渣によるものが水銀ヘドロと混在していること、さらに重要港湾としての機能が低下していることなどによりまして、事業費の一部を負担して行ったものでございまして、本年三月末に終了したところでございます。ややもすると、国、県が公害防止事業の原因者と思われているところがあるとすれば、この点はひとつ御理解をいただきたいと思っております。したがって、今後実施される各種の事業は、これまでの公害防止事業とは別の観点から取り組まれるものでございます。 なお、平成元年度に水俣湾の全魚種を対象に水銀調査を行いました結果、暫定的規制値を上回る十六種の魚が存在していることが判明いたしましたため、当分の間、仕切り網を残すとともに、追跡調査を行い、これを含む全魚種を買い上げるなどの必要な措置を講じることによりまして、湾外への拡散防止、市場への流通防止を図るなど、県民に不安を与えることのないよう、関係機関と協議しながら必要な措置を講じているところでございます。 それから、漁業補償問題についてでございますが、県としては、公害防止事業後の水俣湾を有効活用するよう地元漁協に提案しているところでございますが、漁協側から従来の漁業補償と同じ補償要求が出されております。県としては、公害防止事業は既に終了したものであり、これと同様の補償を行うことはできないと考えているところでございますが、今後も引き続き漁協側と誠意を持って協議を続けてまいりたいと思っております。 それから、水俣病問題の一日も早い解決のための今後の取り組みについてのお尋ねでございますが、私は、知事就任以来、水俣病問題を県政の重要課題と考えまして、認定業務の促進を初め健康不安解消のための特別医療事業の実施、環境の復元、地域振興などさまざまな施策の推進に努めてきたところでございます。 健康被害の救済、環境の復元、地域経済の活性化、この三つがこの問題解決のための大きな柱であると認識しておりますが、そのうち最も重要な問題は、御指摘のとおり認定業務を初めとした健康被害の救済であることは申し上げるまでもございません。 健康被害の救済については、認定業務の促進がその基本でございますが、昨年十二月県議会において阿曽田議員からも御提案がございましたように、地域住民の健康不安解消のためには、今後保健福祉的な観点から新たな施策についても検討する必要があると考えております。地域の実情を踏まえた新たな施策としてどのようなものがあるかについて、水俣病問題対策協議会や実務担当者レベルでの協議を通じまして、地元関係者、患者団体などから意見を聞いているところでございます。  〔中島隆利君登壇〕 ◆(中島隆利君) 公害防止事業についての見解が、お互いこの執行部と私の場合が違うんではないかというふうに思いますが、私は──公害防止事業が今年三月三十一日完了しました。これは、土木事業的なヘドロしゅんせつが完了しただけであって、この公害防止事業の目的は、あの汚染された水俣湾を安全に環境を復元をして返すこと、これが公害防止事業の最後までの任務であろうと思います。今もって汚染魚が十六種いるわけです。そして仕切り網が配置されています。漁場が制限されています。これらについての責任を私は指摘をしているわけであります。先ほど知事の答弁もございましたが、国、県の責任について言及されましたが、現在裁判では闘っておりますけれども、この水俣病問題については、まさにPPP原則で、チッソ、企業の責任はもとよりでありますが、国、県の責任のあることも指摘をされています。県としての責任を、国の責任を、さらに要求をしていただいて、この問題解決の処理をお願いをしておきたいと思います。 それでは次の、IPCS有機水銀新評価基準に対する対応についてお尋ねいたします。 WHO、世界保健機関などでつくるIPCS、国際化学物質安全性計画が、本年四月十一日、胎児に与える影響を強く警告する有機水銀の新しい評価基準をまとめて世界各国に通知しました。これまでの有機水銀の環境基準は、一九七六年の十四年前に、成人の毛髪水銀で五〇ppmと設定されていたわけでありますが、今回IPCSの基準見直し作業が実施されて、イラクやカナダ、ニュージーランドでの有機水銀による暴露事件の研究発表では、非妊婦や男性についての最低発症量については、毛髪水銀値は五〇ppmを変更する必要がないが、胎児は感受性が高く、母体の毛髪メチル水銀値が一〇ないし二〇ppm程度の場合でも生後の精神運動発達に障害を生じる可能性があることを指摘し、より厳しい規制値が必要であると警告をしました。イラクの研究症例では、一九七一年、メチル水銀消毒剤で処理された種子用の小麦を粉にして自家製パンをつくって食べた水銀中毒者が六千五百人以上入院し、四百五十人が死亡した事件であります。この研究症例で、母親の毛髪水銀値が最大一〇ないし二〇ppmでも幼児に五%の神経障害が出る可能性があると指摘しています。しかし、環境庁は、このIPCSの有機水銀新評価基準の勧告に対して、第一次草案が出た昨年の平成元年一月に、環境庁内にメチル水銀の環境保健クライテリアに係る調査研究の専門家会議を設置しました。 その調査報告がこの報告書でありますが、私もこの数日前に執行部よりいただいて見させていただきましたが、先日の六月五日の衆議院環境委員会でも、この報告書について、IPCSが有機水銀の規制値を現行より厳しくする方向にあったことに不安を抱いて環境庁が反論のために用意したのではないか、この専門家会議は、何のための、だれのための研究か、後ろ向きの環境行政に厳しい批判が相次いだと言われます。 この調査報告書は、IPCSの第一次草案に対して研究されたもので、「不確実な知見の引用や著者」「に基づく記載が」あるとか、あるいは「イラクのデータは重要な結論を導くには例数が少なすぎる。」とか、あるいは「科学的評価に耐え得るものとは思われない。」とかなどと書いていますが、IPCSの新評価基準に反論する内容となっています。しかし国会では、この研究者の四名の名前が墨で消し込んであり、研究者が匿名で反論するなど、おかしいと厳しく指摘されています。また、IPCSの国際会議の場にも日本の学者が出席しており、日本のこうした研究の例の不足が逆に指摘されたと言われます。 さらに、国会では地元の馬場代議士が、今回のIPCSの新評価基準は国際的な権威ある学者と機関が出したものであり、日本としても、尊重し対応すべきだと追及しました。それに対し、環境庁も、さらに検討委員会やプロジェクトチームをつくって対応していくことを明らかにしました。北川環境庁長官も、IPCSが指摘している妊婦や妊娠可能な女性の毛髪水銀値の調査についても実施の方向で前向きに対処すると述べています。 そこで、知事にお尋ねいたしますが、IPCS有機水銀新評価基準に対する県としての今後の対応について、また北川環境庁長官が約束した妊娠可能な女性の毛髪水銀の調査についても実施の方向で前向きに対処すると回答していますが、県としてはどのように対応されるのか、お尋ねいたします。 次に、チッソ県債と企業の責任についてお尋ねいたします。 チッソ県債は、今回二十二回目の融資として平成元年度の決算に基づいて十六億円が決定し、本定例議会に補正予算として提案されているわけであります。前々回の昭和六十三年度下期決算分と前回の平成元年度上期分は、連続して二回チッソ県債の発行が見送られたわけであります。 御承知のとおり、チッソ県債は、チッソ株式会社の経営基盤の強化を図り、患者に対する補償金の支払いに支障が生じないよう配慮するとともに、地域経済社会の安定に資するために、昭和五十三年十二月から発行され、今回で通算二十二回目の発行となります。前々回と前回二回については、経常利益が大幅に増加したために、チッソ県債発行が見送られたわけでありますが、今回も県債発行が見送られ、いよいよチッソ株式会社が自力で患者補償を行うようになるのではないかと期待をしていたわけでありますが、今回一年半ぶりに十六億円の県債発行が再び提案され、残念に思っているところであります。 今回経常利益七十二億円を出していますが、十六億円の県債発行になっています。それは、昭和五十七年度決算分、第八回チッソ県債発行分から、チッソ株式会社の経営基盤を強化し、自力で患者補償ができるようにという目的で、経常利益の二分の一が設備投資分としてチッソに還元されてきたわけであります。そのために、今回七十二億の経常利益の半分三十六億円については、チッソ株式会社の設備投資に利用されているわけであります。 去る五月二十九日の環境対策特別委員会で、私も久しぶりにチッソ水俣工場を視察をいたしました。工場は見違えるような設備改善がなされ、新製品の開発や経営改善に努力されていることがうかがえました。しかし、七十二億円の経常利益を出しながらさらに県債を発行して支援をしなければならない状況はまことに残念であります。しかも、チッソ県債は、昭和五十三年発行以来十一年半経過し、四百八十二億円にも達しているわけであります。 チッソ県債発行の当初からの目的は、さきにも申し上げましたように、チッソ株式会社の経営基盤の強化と自力での患者補償金の支払い、そしてチッソ株式会社が水俣地域の活性化に貢献することを目的に、しかも緊急避難的措置としてチッソ県債発行が続けられてきたわけであります。そのためにも、チッソ株式会社は、一日も早くチッソ県債発行を受けないで自力で患者補償ができるような経営基盤の確立と、チッソ水俣工場をもっと強化をし、新規事業の生産工場や子会社の誘致を行い、雇用拡大を図るべきであります。しかし、チッソ株式会社は、一定の努力はしていると考えますが、チッソ県債を発行し金融支援を行った熊本県に対して企業の責任を果たしているとは言えません。 それは、チッソ水俣工場の強化による水俣地域の活性化及び雇用の拡大であります。設備投資も計画以上にはなされているわけでありますが、昭和六十二年から平成元年度までの三年間、チッソ株式会社本社には百二十二億円の投資、主要子会社の四社には二百二十四億円の投資がなされています。金融支援が子会社に集中し、利益が子会社に吸収されていると言われても仕方がありません。特に雇用拡大については、第一回チッソ県債発行時の昭和五十三年のチッソ水俣工場の従業員数は一千二十六人でありましたが、年々減少して現在はわずか七百三名であります。実に三百二十三人の減少であります。チッソ県債発行の条件は、チッソ水俣工場の従業員数を県債発行時の一千名体制に持っていくことも再三確認されてきました。 私は、昭和六十年六月の定例県議会の環境対策特別委員会でも、現在のチッソ株式会社の野木社長にこのことを強く訴えたわけでありますが、野木社長から、経営基盤を確立することが先決でという言葉が出ました。私は、チッソ県債発行は、経営基盤の強化はもちろんであるが、チッソ水俣工場の強化拡大により雇用を拡大し、水俣地域の活性化に貢献してもらうことが最大の課題であると厳しく訴え、社長に確認をしていただいたわけであります。 チッソ株式会社は、チッソ県債発行の条件である水俣地域の活性化及び雇用拡大には全く責任を果たしていないと言わなければなりません。また、水俣地域の活性化及び雇用拡大の問題では、現在、チッソ水俣工場で経営基盤の確立のために、三十数年間水俣病の企業責任の汚名をかぶりながら自力で患者救済を行う会社をつくるために死に物狂いで頑張っておられるチッソに働く労働者の皆さんの労働条件が犠牲になってはなりません。関連企業並みに引き上げ、労働者の意欲と地域活性化への役割を果たすべきであります。 そこで、執行部にお尋ねいたしますが、チッソ県債の今後の見通しと、県債発行の脱却をいつごろには達成できるのか、また、チッソ水俣工場にもっと子会社も含めた新規工場の拡充と雇用拡大をなぜ行わせないのか、従業員一千名体制実現と従業員の処遇改善に向けて県はチッソに対してどのような指導と要請を行っているのか、お尋ねいたします。  〔知事細川護熙君登壇〕 ◎知事(細川護熙君) 初めに、IPCS有機水銀新評価基準に対する今後の対応についてのお尋ねでございました。 IPCSの報告は、具体的な数値の環境基準を定めているものではなく、国際的な専門家グループの集合的意見と位置づけられておりまして、その時点における最新の科学的知見を収集、整理、評価して取りまとめられたもので、このため、報告に連動して何らかの基準が変わるという性格のものではないと承知をいたしております。 県としては、本年四月、このIPCSの報告が出されたことにより、県独自の立場から、水俣市を初めとした関係公的機関を対象に、異常分娩の報告例があるか、あるいはその実態を調査した例がないかなどについて早速確認調査を行い、その結果を県議会の関係委員会にも御報告を申し上げたところでございます。その確認調査の結果では、御心配のような胎児、乳幼児のへその緒や毛髪に含まれる水銀値については一般レベルの数値であり、異常分娩などについても何らそのようなものは認められなかったところでございます。県としては、国において現在IPCSの報告に関する内容の分析などの検討がなされているところでございますので、その検討結果をまちたいと考えております。 また、さきの衆議院環境委員会における妊娠可能な女性の毛髪水銀調査についての環境庁長官発言につきましては、その詳細について承知しておりませんが、現在国において健康調査を含む総合的な調査手法の検討がなされていると聞いておりますので、県としては、国におけるそれらの検討結果をまって対応を考えたいと思っております。 それから、チッソ県債と企業の責任についてのお尋ねでございますが、チッソが一日も早く自力で患者補償を行うことができることを念願し、県議会ともども、国に対しては、同社に対する指導、援助、さらに同社に対してはあらゆる経営努力を強く要請をしてきたところでございます。 チッソ県債につきましては、前回と前々回におきまして発行を見送ったわけでございますが、しかしながら、今回はチッソの元年度決算における経常利益が前年度を十五億円ほど下回り、さらに、前回すなわち元年度の上半期分の発行に当たりましては、年間を通じて発行額を決定することが適当であるという判断から発行が見送られたという経緯もありまして、去る五月二十四日の金融支援協議会におきまして十六億円の県債発行が必要ということで、今議会に関係予算を御提案しているところでございます。 チッソの経営状況の見通しも、経常利益は出ておりますものの、水俣病補償関係の特別損失によって累積赤字がふえ続けておりますほか、今後の景気動向など不透明な部分もありまして、将来を見通すことはなかなか難しい状況であるようでございます。したがって、チッソのなお一層の経営努力は当然でございますが、今後も当分の間は何らかの金融支援は必要であろうかと考えております。 なお、チッソ水俣工場の強化を図ることは、地域の活性化及び雇用の確保という観点から大変重要なことでありまして、従来から機会あるごとに同社に対して、雇用の確保はもちろんのこと経営の体質強化を要請してきたところでございます。 水俣工場におきましては、これまでも幾つかの新規の事業投資が行われてきたところでございまして、元年度におきましても液晶部門にかなりの設備投資がなされ、それによって世界のトップレベルの液晶生産施設を備えるようになりました。今後の工場の拡充強化をさらに期待をしたいと思っております。また、雇用確保に対する努力もなされておりまして、特に本年四月は新規に二十六人を採用するなど、明るい兆しも見られるところでございます。 いずれにしても、チッソの地域の活性化に果たす役割は大きいものがございますし、できるだけ早く自力経営の軌道に乗るように今後とも強く要請をしてまいりたいと考えております。  〔中島隆利君登壇〕 ◆(中島隆利君) IPCSの新評価基準に対する執行部、知事との見解が若干違うわけでありますが、というのは、現在の五〇ppmの基準が出されたのは、一九七六年の同じくこの環境保健クライテリア基準によって今実施されているわけであります。そのときもこの機関で協議され、それぞれの各国の研究例を持ち寄って今の基準がなされているんです。今回新たに出されたのは、今までの、従来の基準よりもさらに妊産婦の胎児に対する影響が世界の事例で数多く出てきている、これを各国持ち帰って研究し、万全な体制をとろうというのが今回の勧告であります。ですから、そういう立場に立って今回の勧告、指針を受け取って、特に水俣病最大の発生の地でありますし、この解決に最大の責任を持つ我々県としては積極的にこのかかわり合いを持っていただきたいと思います。 それから、住民の健康診断の件でありますが、これは通常の妊産婦の健康診断の過去の資料をもとに分析をされたわけであります。妊産婦の健康診断、当時の資料の集計であります。各国で研究されているのは、汚染された患者を追跡調査をして五年、十年した結果で出されているわけであります。そういうことの違いも含めてひとつ検討しながら、最後に御答弁いただきました、国の方で総合調査も含めて検討すると、それをまって対応するということでありますので、県の方の対応をよろしくお願いをしておきたいと思います。 次に、阿蘇の降灰対策について、降灰量の調査体制について。 昨年七月十六日、第一回噴火以来、本年の六月十二日まで通算六十五回の噴火を繰り返し、大量の降灰を阿蘇地域にもたらし、阿蘇地域の皆さんは甚大な被害をこうむっておられます。被害をこうむっておられる方々に対し心からお見舞いを申し上げます。 阿蘇地域の降灰被害は、本年五月二十九日現在で、農作物十四億四千万、特用林産物五千二百万円、合計十四億九千二百万円の被害に達しています。その他阿蘇地域の七カ町村が、平成元年度の一年間、降灰対策事業として行った降灰地域の農家の土壌酸度矯正事業や道路の降灰除去、ビニールハウスの洗浄機購入等数多くの単独の降灰対策事業で総額一億六千万の事業を行っています。そのうち約半分、八千四万円をそれぞれの町村が一般財源で負担しています。平成二年度も降灰対策事業の予算が組まれており、阿蘇降灰対策は各町村に対しても大きな負担となっています。 社会党は、昨年の十一月に阿蘇火山降灰対策特別委員会を設置し、これまで阿蘇降灰被害地を三回視察してまいりました。そのたびに、阿蘇噴火による被害の甚大さと阿蘇地域住民の皆さんの御苦労を身にしみて感じているところであります。そして、社会党は地元の皆さんの要求をつぶさに取り上げ、議会や関係各課にお願いし努力をしてきたところであります。 関係町村や県執行部の各課の献身的な努力で、阿蘇降灰被害に対する施策が実施されていますが、今なお不十分な点がございます。今回は、去る四月二十日、第三回の現地視察で要望を受けました点と緊急に対応すべき課題について取り上げ、お願いしたいと思います。 去る四月二十日の五十回目の大噴火でさらに莫大な被害が拡大しています。我々社会党の阿蘇降灰対策特別委員会も、大噴火後の四月二十八日に第三回目の被災地の視察をいたしました。後ほど灰を見せたいと思いますが、このような降灰が、黒川牧野の牧草をすべて覆い隠し、約二センチメートルの降灰が一面に積もっていたわけであります。厚い所では十センチメートルほども積もっているわけであります。これは、四月二十日の大噴火によるわずか一日の降灰量であります。 阿蘇火山測候所は、四月二十日の一日だけの降灰量を百八万トンと推定、発表いたしました。昨年七月噴火以来の降灰量は、四月現在六百八十五万トンと発表されています。昭和五十四年の噴火のときは一千万トンの降灰量であったと言われますが、しかし、それ以上の大噴火が続いている今回が、現時点で六百八十万トンの降灰量でしかないというのは信じられません。 私が再三に降灰量問題を取り上げているのは、もう既に梅雨に入っています。現在は余り雨が降っていませんが、今年の梅雨は長く終盤の七月には大雨が降るだろうという長期予報が出ています。もし大雨があったときに、この降灰量が確実につかめていなければ、防災対策が確実に対応することができず、下流域である熊本市が大被害をこうむるおそれがあるからであります。そればかりでなく、降灰量の的確な把握は、土壌の酸度矯正、治山ダムの建設、砂防ダムの建設、河川の掘削工事等、降灰対策すべての事業と対政府に対する対策を要求する上でも重要な課題であると考えます。 現在、降灰量測定は、経営普及課、森林保全課、砂防課の関係各課が、それぞれの事業目的のために降灰量測定点を設置し、外部に委託をして降灰量を測定しています。その測定点が総数八十カ所ありますが、測定点が目的が違うのでばらばらであり、降灰量の測定も、昨年の七月の噴火時点から行っている所と昨年の十月から実施している所、十一月から実施している所とまちまちであります。しかも測定日が、一週間ごとに行う所、二週間ごとに行う所、不定期に行う所と、これもまちまちであります。 阿蘇火山測候所は、この県が実施した降灰量測定資料でさきに発表した降灰量を推定しているわけであります。現地視察を行って、阿蘇火山測候所長さんに国の降灰量測定箇所が設置されているかどうかお尋ねしました。二カ所しかなく、降灰量の総量推定は、県の資料でほとんど行っているということであります。所長さんも自信なさそうで、全くもって不安なことであります。 鹿児島県は、我が党でも視察をしましたが、五十八カ所の測定点を、桜島の火口周辺と火口中心に、方位角度四十五度、八方向十キロメートルごとの測定点を設置し、毎月の降灰量を確実に測定し、対策を講じているわけであります。熊本県も、阿蘇の降灰量の確実な測定のために、国に万全な測量体制を要求すべきであります。 県も現在八十カ所の測定点を持っているわけでありますが、降灰量全体の把握のために、幾つかの測量点を整備配置をして、測定日を統一した確実な測量体制にすべきであると考えますが、県の対応をお尋ねいたします。 さらに、阿蘇地域の火山災害予防対策と警戒避難体制の対策でありますが、現在、阿蘇町、一の宮町、白水村で阿蘇火山防災会議協議会が設置され、阿蘇中岳の立入規制や観光客の安全対策がとられています。その他の阿蘇地域住民全体の警戒避難体制は、各町村ごとの通常の防災計画で行われています。 先日、阿蘇のある村の防災計画を見せていただきましたが、情報収集や広報、避難体制は一応通常の災害計画としては検討してありますが、火山災害予防対策は一項目設けてありますが、県、町村及び防災関係機関と協力して、災害の予防、災害の応急対策を実施し、その他は県地域防災計画によるとしています。しかも阿蘇町、久木野村は防災無線も完備していません。 阿蘇火山の大噴火は、これまで約五年ごとに起こっていますが、特に世界一の活火山であり、どのような災害が起こるかもわかりません。登山者、旅行者、阿蘇地域全住民の生命、身体を守るため、阿蘇火山災害予防のための対策と避難対策を具体的に計画をすべきであると考えますが、執行部のお考えをお尋ねいたします。 次に、治山事業と火山砂防事業におけるダム設置及び河川の掘削事業についてお尋ねいたします。 午前中質問がなされておりますが、特に私がお尋ねしたいのは、本年の梅雨は、既に入っておりますが、予報のとおり長期で大雨の予想がございます。現在のダムの設置及びしゅんせつの実施状況で万全な態勢であるのかどうかをお尋ねして、終わりたいと思います。  〔知事細川護熙君登壇〕 ◎知事(細川護熙君) まず、降灰量の調査体制についてのお尋ねでございますが、県におきましては、治山や砂防ダム、土壌改良、道路管理などのために、現在八十カ所で降灰の測定を実施しておりまして、所期の目的は一応達していると考えております。 お尋ねの降灰測量体制につきましては、今後とも一次的にはそれぞれの事業目的に沿って降灰量の測定を行っていくことになりますが、引き続き、測候所や関係機関と連携をとってよりよい観測体制になるように努めてまいりたいと思っております。 それから、火山災害予防対策と警戒避難対策についてでございますが、現在、災害対策基本法などの関係法令、県地域防災計画の阿蘇火山爆発対策計画並びに周辺町村の地域防災計画に基づいて対応をいたしております。 阿蘇山頂付近の対策につきましては、周辺の関係三町村で設置する阿蘇火山防災会議協議会において作成されました阿蘇火山防災計画の中で、災害予防、災害応急対策など必要な措置を実施することとされております。 いずれにいたしましても、災害対策には万全を期するように今後とも努めてまいりたいと考えております。 それから、治山・砂防事業によるダムの設置、河川の掘削事業などの状況についてのお尋ねでございましたが、さきに深水議員にもお答えをいたしましたとおり、治山事業につきましては、平成元年度までに約千五百基の治山ダムを阿蘇周辺に設置してまいりました。さらに降灰対策として、平成二年度の災害関連緊急治山事業によって既に十四基着工し、また、四月二十日の降灰に関連して新たに三基を設置することにいたしております。これらの治山ダムに加えまして、通常治山事業で四十八基の設置を計画しているところでございます。 それから、砂防・河川事業の実施状況についてでございますが、砂防ダムは現在までに百六十四基を設置いたしました。しかしながら、阿蘇は昨年七月中旬に爆発をして、なお噴火が続いておりますし、降灰による災害を防止するため、雨季前の対策として、現在まで既設・新設ダム、掘削などで約二十八万立方メートルの容量を確保したところでございます。そのほか、警戒避難対策として、危険度の高い渓流に土石流発生監視装置も設置をいたしました。 それから、河川の掘削状況についてでございますが、今後の降雨に備えて、平成元年度で白川水系につきまして約四万立方メートルの掘削を行いましたし、また平成二年度におきましても約四万六千立方メートルの掘削工事を施行中でございます。 今後も噴火が続くものと予想されますので、当面の防災対策としては、火山灰の噴出、砂防ダムの堆積状況を見きわめながら、ダムや河川の掘削を進めてまいりたいと、そのように思っております。  〔中島隆利君登壇〕 ◆(中島隆利君) このほか、阿蘇降灰対策については、一般質問で地元の草村議員が質問されるということでありますが、このほか、防災・営農計画、さらには市町村自治体の財政援助、いろんな課題がございますので、よろしくお願いをしておきます。 それでは次に、社会福祉施設で相次ぐ不祥事件についてお尋ねいたします。 老人ホームや福祉ホーム等の施設関係者が、入居者の預金を勝手に引き出すなど不祥事が相次ぎ、県民に大きなショックを与えています。倫理というより人権が問われる重大な事件であります。しかも、熊本県の福祉の拠点、希望の里で起きたこの事件は、熊本県の福祉行政を根本から問う重大な問題であります。 事件の起きたこの希望の里は、昭和五十五年着手され、二十三億四百万円かけて建設された熊本県の心身障害者福祉の拠点であります。施設は、重度身体障害者授産施設のくすのき園、重度障害者多数雇用企業、希望の里ホンダKK、身体障害者福祉ホームのりんどう荘、精神薄弱者授産施設こすもす園、老人福祉センター、勤労身体障害者教養文化体育施設等々六つの施設があります。そのうちのくすのき園とりんどう荘を、熊本県社会福祉事業団が受託運営をしているわけであります。熊本県社会福祉事業団は、県立の社会福祉施設を公立民営の理念に基づいて受託運営し、県民福祉の増進に寄与するという団体であります。 事件は、この二つの施設で起こっているわけでありますが、一つは、重度身体障害者授産施設・くすのき園、雇用の機会に恵まれない重度の身体障害者に対し、授産訓練を行い、技術を習得させ、自立更生を促進することを目的として設置された施設で起きた事件であります。この施設の事務職員が、証票と帳簿の合わない不明金約三十四万円がことしの二月の監査で発覚し、三月三十一日付で依願退職を行っているということであります。この事務員の事務処理が、本人も金の出入りがわからないくらいずさんで、帳簿のどんぶり勘定であったと言われます。しかも県の昨年の監査は書類監査であったと言われます。 二つ目の事件は、身体障害者福祉ホーム・りんどう荘で起こった事件ですが、ここは、希望の里やその他の施設で働いている障害者の方で、生活が困難な身体障害者に対し、その自立生活を促進することを目的とする施設で、定員二十名の障害者の方が入居されています。その施設で身体障害者の日常の生活相談介助を行い、自立した生活ができるよう援助する相談介助員が引き起こした事件であります。入居者から預かっていた預金通帳と印鑑を使って、障害者基礎年金など合わせて約二百三十万円を勝手に引き出し着服していたことが発覚し、その後の県のりんどう荘の入居者二十人と入所経験のある十二人を対象に金銭関係などの調査を行ったところ、入所経験者を含む十人が被害を受けていた疑いが強く、入所者から、無断でカードローンを組んで二十五万円を着服し、結婚式の貸衣装代として口座から二十万円の引き出しを頼んだのに十万円しか受け取っていないとか、数々の訴えが上がっています。新聞報道によれば、被害額は現在入所者十人で着服総額七百万円にも達すると言われます。県は、この前相談介助員を五月十一日、私文書偽造、詐欺、業務上横領、そして背任等で松橋署に告発をいたしました。 障害者の方々が不自由な体にむちうって一生懸命自立するために働いて蓄えた預金を無断で引き出したり、カードローンを無断で組んで着服したり、障害者の方からの借金額以上を勝手に引き出すという、全く弱い障害者の方々を食い物にするような事件であり、障害者の人権を踏みにじる行為であります。しかも、この着服金が、この相談介助員みずからの家のローンの返済に充てられていたということであります。余りにも異常な事件であります。 この事件が最初一月に発生し、被害者とこの前相談介助員との和解が行われ、三月に解雇処分になっています。ところが、その後の新聞報道や内部告発で県が知り調べたところ、このような多数の事件が発覚したということであります。社会福祉事業団の姿勢も問われなければなりませんが、県の指導と監査の不十分さを厳しく指摘しなければなりません。 また、熊本市の社会福祉法人金城会の軽費老人ホームで、理事長みずからが八十三歳の入居者から預かった一千三百万円の定期預金証書を担保に金融機関から金を借りていたという事件も起こっています。 またもや、熊本市での私立保育園で一・五倍の定員外保育が行われていることが三月発覚いたしました。熊本市が定員外解消をその園に指示したところ、五月になったらプレハブ園舎を別な地域に建て、定員外の百二十名の保育を始めているということであります。 昭和六十三年にも、熊本市が経営する保育園で一億円以上の保育料を不正流用する事件が起こっています。相次ぐ福祉施設での不祥事件が起こっていますが、熊本県全体の福祉行政が今県民から問われています。 そこで、執行部にお尋ねいたしますが、まず、りんどう荘で被害を受けられた障害者の方々にどのような補償処置をとられるのか、そして、くすのき園の不明金の三十四万は何年度分なのか、それ以外の不明金はないのかどうか、お尋ねいたします。 また、現在の社会福祉施設にどのような監査指導を行っているのか、そして、このような不祥事件が起こらないように、今後常設監査の監査体制の確立をすべきと思うが、どのような体制をとられるのか、お尋ねいたします。 特に、事業団の職員の採用と研修はどのように行っているのか。公開公募を行い、福祉事業にふさわしい人材を求めるべきであります。これまでの対応と今後の取り組みについてお尋ねいたします。 最後に、保育園の定員外問題は相次いで発生しており、しかも、定員外保育で福祉行政を著しく逸脱し悪質化しています。監査指導で改善に従わなければ、認可を取り消すか重大な処分をもって対処すべきであります。一部の悪質な保育園設置者の事件のために、県全体の保育行政の信頼を欠くことになります。再び不祥事が起こらないように執行部の監査指導体制を早急に確立する必要がありますが、これまでの対応と今後の対策についてお尋ねいたします。  〔知事細川護熙君登壇〕 ◎知事(細川護熙君) 社会福祉施設における不祥事件に対する今後の対応についてのお尋ねでございますが、まず、被害者に対する救済対策につきましては、現在県と事業団で被害者並びに被害額を調査中でございまして、それが確定次第、県、事業団の責任において救済措置を講じてまいりたいと思っております。 それから、くすのき園における使途不明金三十四万円は、平成元年度分として明らかになったものでございまして、現在それ以前の使途不明金の有無についても調査中でございます。 次に、社会福祉施設の指導監査につきましては、これまでそれぞれの所管課で年度計画を立てまして実施をしてまいったわけでございますが、毎年対象施設が増加していることなどもございまして必ずしも十分なものではございませんでした。このため、これまで一人でありました専任職員を二人に増員するとともに、専任職員二人を含む関係各課の職員から成る十一人の監査班をスタートさせまして、監査指導体制の整備充実を図ったところでございますが、とにかく監査体制のあり方につきましては、今後とも十分検討するように指示しているところでございます。 それから、事業団職員の採用につきましては、昭和六十年四月までは選考採用によっておりましたが、同年六月以降、原則として公募による試験採用を行っております。今後とも、公募による試験採用を原則としながら、有為の人材を得るために、選考採用や県との人事交流なども進める必要があると考えているところでございます。 また、事業団職員の研修につきましては、年一回事業団内部で全員研修を実施するほか、厚生省などの行う研修にも派遣をしておりますが、今後研修体制の充実につきましても努めてまいりたいと思っております。 それから、保育園の定員外保育についてでございますが、昭和六十三年度に発生した事件にかかわる保育所に対しては、最高五カ年の措置費の一部減額を含む厳しい処分を行いますとともに、措置権者である市町村に対し、適正な措置事務を行うように強く指導をいたしたところでございます。 また、新たに社会福祉法人の理事、監事研修会を開くなど、保育所の適正運営についての自覚を促してまいりましたが、いまだに定員外保育が行われていたことは大変残念だと思っております。 今後とも、このような不祥事に対しましては厳正に対応してまいりますとともに、さきに述べました監査体制のもとで、このような不祥事が生じないように指導をしてまいりたいと思っております。  〔中島隆利君登壇〕 ◆(中島隆利君) 今御答弁いただきましたが、社会福祉施設の監査体制でありますが、これについて専任体制で持たれるということでありますが、今後この監査体制のさらに業務の日常の指導についての万全な体制をとっていただきたいと思います。 それから、事業団の職員の採用についてでありますが、これについては特に公募を行っているということでありますが、後任のくすのき園の介護員については既に採用されておるようでありますが、これについても安定所からの紹介と、こういうことであります。やはり事業団としての福祉職員の採用であれば、もう少し、先ほどおっしゃったように、この福祉事業に対する人材、これの確保について万全な選考基準を設けての採用をしていただきたいと思います。 それから、時間がないので次に入りますが、先ほど申しました阿蘇の降灰です。これは黒川牧野で降った灰であります。これくらいの灰が堆積をしているわけでありますが、これが梅雨どきにどれだけ流れるのか、そういうことで今危惧をされていますので、ひとつ防災対策については万全な対策をとっていただきたいと思います。 それから、時間がありませんので最後の質問に参ります。阿蘇畜協の使途不明金問題についてであります。 阿蘇畜協が、使途不明金問題で、組合員六十四人の代表が、組合員に支払われるべき補てん金など一億四千六百万円を流用していたとして組合長を業務上横領罪で一の宮署に告発をしたのは先月の五月十四日であります。それ以来、本日まで一カ月間、連日新聞に載らない日がないように、九州農政局の監査で指摘された経理のずさんさと事業の疑惑が次から次に出てきています。今なお疑惑が出てきており、当の阿蘇畜協も、監査を行った九州農政局も、また、畜産振興の補助事業を計画指導する県の執行部も全くわからない状況ではないかと思います。 地元畜産農家の方々は、牛肉の輸入自由化が目前に迫り、阿蘇の畜産農業の存亡をかけた頑張りが必要な時期に、農家のよりどころであるべき協同組合がかかる事態であっては、阿蘇の畜産農業のあすを考えることすらできないと大変な心配をしておられます。真相解明を求め、組合員の一千五百人の署名を添えて、五月三十一日、県や九州農政局、一の宮警察署、三機関に提出されています。告発に基づく警察の捜査も行われていますが、畜産振興事業を計画、指導する県執行部の責任と真相解明による組合の正常化は、組合員の不安を取り除くためにも、厳しい畜産業の立て直しのために、県執行部は全力を挙げて解明を図るべきであります。 疑惑が持たれている事業は、県の家畜導入資金供給事業により農家の申請に基づいて購入した牛が農家に渡っていないことが会計検査院の検査でわかり、県も五月十八日から、制度を悪用した不正行為の疑いがあるとして現在調査を行っているわけであります。 この補助制度は、農家が経営拡大を図るため、優秀な雌牛を購入する際、一頭当たり九万円程度を補助するもので、国と県が二分の一ずつ助成する事業であります。各農家が畜協を通じて国に申請し、認められる畜協に対しては補助金が支払われ、畜協で一括して牛を購入して所有し、申請した農家に貸し付ける制度であります。貸付期間は、子牛で五年、成牛で三年、それを過ぎると農家が補助金を除いて購入価格を畜協に払って所有するわけであります。県のこれまでの調査では、阿蘇畜協がこの家畜導入事業資金供給事業で昭和六十一年度から六十三年度までで四百三十頭導入しており、そのうち百七頭が虚偽申請手続で、個々の農家ではなく、組合長が関係する農事組合法人のあか牛肥育牧場で飼育していたことが判明しました。さらに、この百七頭のうち、実際あか牛肥育牧場で飼育されていたのはわずか五十二頭だけで、あとの五十五頭の不明分を調査したら、北海道に二回にわたって三十五頭が繁殖牛が売られていたわけであります。あと十八頭が不明で現在調査中であると言われます。 阿蘇畜協が虚偽の申請手続で補助を受け、さらに導入牛を北海道に転売していた問題が、畜産振興の計画、指導の全責任を持つ県が書類検査でしかチェックしておらず、事業が確実に実行され、成果を上げていることも確認できず…… ○副議長(鏡昭二君) 中島議員に申し上げます。残り時間が少なくなりましたので、質問を簡潔に願います。 ◆(中島隆利君) (続)九州農政局も八年間も農協監査をしていないということは、国も県も行政の責任を全く果たしていないと指摘しなければなりません。 阿蘇畜協には、このほか、肉用子牛価格安定事業や子牛生産拡大奨励事業でも疑惑が持たれています。九州農政局の二回にわたる監査では、農家に補てんされるべき価格差補てん金が一部阿蘇畜協に返金されていたり、補助金の使途が不明であったり、金額支払い期日が不明確で白地領収証があったり、全く手がつけられない状況であります。 そこで、執行部にお尋ねをいたしますが、使途不明金の事業のこれまでの調査と今後の見通しについて、さらに、畜産振興の補助事業と監査体制はこれまでどのように行ってきたのか、また、今後このような不祥事件が起こらないような監査指導体制をとるのか、最後に、組合正常化へ向けての対応と見通しについてお尋ねをいたします。  〔知事細川護熙君登壇〕 ◎知事(細川護熙君) 阿蘇畜協の使途不明金につきましては、県で調査した結果によりますと、本来生産者に全額交付されるべき肉用子牛価格安定事業の価格差補てん金並びに子牛生産拡大奨励事業の奨励金が、阿蘇畜協から一たん農協へ振り込まれたものの、その一部または全額が生産者に交付されることなく、積立金などの名目で阿蘇畜協へ還流されていることが判明いたしました。ただし、これらのことは阿蘇畜協の役員会では承認されております。 また、家畜導入事業資金供給事業は、阿蘇畜協が繁殖雌牛を農家へ貸し付ける制度でございますが、借り受けを申請した農家の中に牛を飼育せず名義のみのものがあり、それらの牛は、実際には農事組合法人あか牛肥育牧場で飼育されておりまして、その一部が転売されていることが判明しております。 これらの事件につきましては、五月十四日に組合員六十四名が警察に告発したことによりまして、当局での事実の解明が急がれているところでございます。 監査指導体制につきましては、阿蘇畜協は、熊本、大分の両県にわたることから、監督行政庁は国になっておりますが、検査は、昨年、ことしと実施されてきたところでございます。 畜産団体が補助事業を行う場合、県としては、これまで事業計画から実績報告まで書類上の審査をもって確認をしてきたところでございますが、今後は、書類審査に加えまして必要に応じて現地調査などを行うなど、県として可能な審査の適正強化に努めてまいりたいと思っております。 組合の正常化につきましては、今後とも国と緊密に連携をとりまして、財務内容の明確化と業務が正常化されるように指導をしてまいるつもりでございます。  〔中島隆利君登壇〕 ◆(中島隆利君) 以上で私の代表質問を終わるわけでありますが、最後に一言だけお願いをしておきます。 今回の福祉施設での一連の不祥事件は、全く弁解の余地はないと思います。一時的な、部分的な対策でなく、福祉行政の根本的な改善をしていただきたいと思います。そして福祉には、特に身体障害者、身体にハンディのある障害者の方々には、社会のすべての権利を健常者と同じように享受するわけでありますから、心の通った福祉政策をやっていただきたいと強く申し上げて、私の代表質問を終わります。(拍手) ○副議長(鏡昭二君) 以上で通告されました代表質問は全部終了いたしました。 これをもって代表質問を終結いたします。 明十六日は午前十時から会議を開きます。 日程は、議席に配付の議事日程第三号のとおりといたします。 本日は、これをもって散会いたします。  午後二時四十六分散会...